I.個人事業者の事業承継税制の創設
昨年12月21日に閣議決定された平成31年度税制改正大綱に個人事業者の事業承継税制の創設が盛
り込まれたことについては、前号でご紹介したとおりです。その内容について少し触れておきたいと思
います◆認定相続人(承継計画に記載された後継者で、中小企業における経営の承継の円滑化に関する
法律による認定を受けた者)が、2019年1月1日から2028年12月31日までの間に、相続等
により取得した特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に特定事業
用資産の課税価格に対応する相続税・贈与税の納税を猶予するというものです◆このうち、承継計画と
は、認定経営革新等支援機関の指導および助言を受けて作成された特定事業用資産の承継前後の経営見
通しなどが記載された計画で、2019年4月1日から2024年3月31日までの期間に都道府県に
提出する必要があります。内容的には法人版に準じたものと思われます◆ここでいう特定事業用資産と
は、事業用の土地(面積400uまで)、建物(床面積800uまで)のほか、減価償却資産(固定資
産税又は営業用として自動車税、軽自動車税の課税対象となっているものなど)が該当し、適用対象部
分の課税価格の100%に対応する相続税・贈与税額が納税猶予されます◆少々ややこしいのは、相続
税法に規定する現行の事業用小規模宅地特例との選択適用となり、現行の事業用小規模宅地特例につい
ては、相続前3年以内に事業の用に供された宅地等(その宅地等の上で事業の用に供されている減価償
却資産の価額が、宅地等の相続時の価額の15%以上である場合を除く)を原則として除外するなど、
現行制度との調整が必要になると思われます◆ちなみに、日本医師会からは「今回、国税の相続税等に
おいて一定の措置がとられたことにより、地域を支える全国約4万2千の個人立病院・診療所の円滑な
事業承継がなされるものと考えています。」との声明が公表されています。申し上げるまでもありませ
んが、要件については当然のことながら、法人版と同様なものや、異なるものが混在することからそれ
ぞれの要件をクリアーしていく必要があります。