I.贈与者・特例後継者の要件
今回は、贈与者・特例後継者の要件について触れていきたいと思います。なお、前号までと同様に「非
上場株式の贈与税の納税猶予及び免除制度の特例」についての要件です。相続税の場合は要件が異なり
ますが、同一のものもあります◆まず、贈与者(先代経営者)の要件についてです。以下、列挙したい
と思います。@会社の代表権を有していたこと(代表権に制限のない代表者である必要があります)A
代表者である期間内のいずれかの時及び贈与の直前に同族関係者と合わせて総議決権数の過半数を保有
していたことB代表者である期間内のいずれかの時に同族関係者の中で筆頭株主(経営承継受贈者を除
く)であったことC贈与時以降、会社の代表権を有していないことD保有株式のすべてを贈与したこと
(後継者が贈与を受けると総議決権数の2/3を超える場合には、この2/3を超える株式数以上)◆次
に、特例後継者の要件について列挙します。@贈与日以降、会社の代表権を有していることA贈与日時
点で20歳以上であることB贈与日まで継続して3年以上役員に就いていたことC贈与日以降、同族関
係者と合わせて総議決権数の過半数を保有することになること。この場合、後継者が1人の場合には、
同族関係者の中で筆頭株主であること、後継者が2人又は3人の場合には、総議決権数の10%以上を
保有し、後継者とその同族関係者(他の後継者を除く)の中で筆頭株主であることが要件となります◆
贈与者の要件については、複数の者からの贈与による承継が可能です。例えば、先代経営者である父親
からその保有する議決権50%の株式を子へ贈与し、その後、母親からその保有する議決権30%の株
式を贈与した場合も、一定の要件を満たせば、特例制度の適用対象となります◆また、後継者の適用範
囲が拡大されました。例えば、議決権80%保有の先代経営者である父親が子Aにその50%を、子B
に30%を贈与した場合も、一定の要件を満たせば、子Bへの贈与も特例制度の適用対象となります。
後継者が複数の場合は、特例承継計画と贈与期間の関係に注意する必要がありますし、後継者はすべて
代表権を持つ必要があります。
II.NISAの非課税期間が終わったら
2014年からスタートしたNISA(少額投資非課税制度)。
2014年に開設した口座は2018年末で5年の非課税期間が終了となります。その後は、口座内の金融商品を
@翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバー)か、A課税口座に移すか、又は、B売却することを選
択することができます。
<ロールオーバーを選択した場合>
・2019年1月1日に、2018年12月の最終営業日の時価により、2019年分の非課税枠へ移管されます。
引き続き、5年間(2023年12月末まで)は配当金や売買益等が非課税です。
・ロールオーバー可能な金額に上限はなく、時価が120万円を超過している場合も、そのすべてを翌年の
非課税投資枠に移すことができます。
・NISA口座を開設している証券会社に、あらかじめ「非課税口座内上場株式等移管依頼書」を提出する
必要があります。
非課税期間が終了し、翌年の非課税投資枠にロールオーバーをした場合、ロールオーバーした額分だけ
非課税投資枠を使い、新規に投資できる額が少なくなります。ロールオーバーした金額が120万円以上の
場合、非課税投資枠を使い切ることになりますので、新規の投資はできないことになります。
・別の証券会社のNISA口座へロールオーバーすることはできません。
NISAを利用する証券会社を変更している場合は、金融機関変更手続きを行い、当該年に利用した証券
会社に非課税管理勘定を設定してください。
・NISAからつみたてNISAへのロールオーバーはできません。
<課税口座への移管を選択した場合>
2019年1月1日に、2018年12月の最終営業日の時価により、課税口座へ移管されます。
取得価額は2018年最終営業日の時価となり、その後生じた配当金や売買益等は課税されます。
非課税期間終了時点で保有資産が値上がりしているのか値下がりしているのかで、その後に課税口座で
保有している金融商品を売却する際に支払う税金に差が出てきます。
(ケース1)
NISA口座で120万円で購入した株式が150万円に値上がりしていた場合、取得価格は150万円に変更されま
す。その後、
@150万円から170万円に値上がりし売却した場合
→ 利益の20万円(170万円−150万円)に課税されます。
A150万円から110万円に値下がりし売却した場合
→ 利益がないので税金はかかりません。
(ケース2)
非課税期間終了時に保有資産が値下がりしていた場合は、とくに注意が必要です。
NISA口座で120万円で購入した株式が100万円に値下がりしていた場合、取得価格は100万円に変更されま
す。その後、
@100万円から130万円に値上がりし売却した場合
→ 利益の30万円(130万円−100万円)に課税されます。
A100万円から80万円に値下がりし売却した場合
→ 利益がないので税金はかかりません。
ケース1では最初から課税口座で購入・売却した場合よりもNISA口座から課税口座へ移したほうが支払う
税金は少なく済みますが、ケース2ではNISA口座から課税口座へ移した場合のほうが支払う税金が多くな
ってしまいます。
III.お正月用ホームページ素材集
初売りセールや新年のご挨拶ページで使える素材のページに画像を追加しました。
アクシス総合会計のホームページからダウンロードしてご利用ください。
ダウンロードページのURL:
http://www.axis-k.com/sozai/newyear/index.html
(Webデザイナー)
IV.同一労働同一賃金にむけて(その2)
今月は、先月に引き続き同一労働同一賃金ガイドライン案についてご案内したいと思います。
A各種手当の均等・均衡待遇の確保
ボーナスについて、会社の業績等への貢献に応じて支給しようとする場合、同一の貢献には同一の、違
いがあれば違いに応じた支給を求める。役職手当についても、役職の内容、責任の範囲・程度に対して
支給しようとする場合、同一の役職・責任には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求める。
そのほか、業務の危険度等に応じて支給される特殊作業手当、交代制勤務などに応じて支給される特殊
勤務手当、所定労働時間を超えて同一の時間外労働を行った場合に支給される時間外労働手当の割増率、
深夜・休日労働を行った場合に支給される深夜・休日労働手当の割増率、通勤手当・出張旅費、勤務時
間内に食事時間が挟まれている際の食事手当、同一の支給要件を満たす場合の単身赴任手当、特定の地
域で働くことに対する補償として支給する地域手当等については、同一の支給を求める。
なお、基本給や各種手当といった賃金に差がある場合において、その要因として賃金の決定基準・ルー
ルの違いがあるときは「無期雇用フルタイム労働者と有期雇用労働者またはパートタイム労働者は将来
の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」という主観的・抽象的説明に終始しがち
ですが、これでは足りず、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実
態に照らして、不合理なものであってはならない。とされています。
(社会保険労務士)
V.ガーナ体験談 (7)
私はガーナで女子児童に放課後、手工芸を教える活動をしていました。その目的は、手に職をつけさせ
て自立を支援することでした。
活動していく中、手工芸を教えるだけでは物足りず日本語の挨拶、歌や盆踊り、折り紙などの日本文化
を伝えることをカリキュラムに加えました。
外国人である私の活動に興味津々な野次馬ガーナ人たちが小さなコミュニティースペースに入れ替わり
立ち代わり訪れました。そこに12、3歳くらいの少年が度々顔を出すようになりました。この活動の対象
は女子児童だったため彼をメンバーに加えることができず、彼は活動の様子を覗いて帰るだけでした。
ある日の日本文化紹介で子どもたちに自分の名前をカタカナで書いてもらうことにしました。
私がガイドラインとして書いた点と点をつなぎ合わせて文字の練習をした後、新聞紙大の紙でかぶと折り、
その中心に自分の名前を書いてもらいました。
そこへ参加したそうにしていた彼を見つけ、その日だけメンバーに加えることにしました。彼の英語名
はエマニエル。学校に通っていないので自分の名前を英語でさえ書くことができないとの事でした。
しかし、彼はかぶとの真ん中にしっかりとカタカナで自分の名前を書くことができました。
その時の彼の自信に満ちた誇らしげな顔は今でも忘れません。
(瀬戸 由美)