II.関税の仕組みと歴史
米国による鉄鋼とアルミニウムに対する輸入関税等が話題になっています。今回は、関税の仕組みと歴
史について、まとめてみます。 関税は、今日では一般に「輸入品に課される税」として定義されてい
ます。日本の関税率は大別すると法律に基づく税率と条約に基づく税率とに分けられます。 法律に基
づいて定められている税率を国定税率といいます。国定税率は、「関税定率法」と「関税暫定措置法」
という二つの法律によって定められています。
「関税定率法」には、事情に変更のない限り長期的に適用される基本的な税率(基本税率)が定められ
ています。
「関税暫定措置法」には、一時的に基本税率が適用できない事情がある場合に、一定期間基本税率に代
わって適用される暫定的な税率(暫定税率)が定められており、常に基本税率に優先して適用されます。
「関税暫定措置法」には、開発途上国・地域からの輸入品に対して適用される税率(特恵税率)も定め
られています。特恵税率は、経済が開発の途上にあり、特恵関税の供与を希望し、その供与が適当であ
ると認められた国・地域に対して適用される税率であり、最恵国待遇の例外として、実行税率(国定税
率(特恵税率を除く)と協定税率のいずれか低い税率)よりも低く設定されています。
条約に基づく税率には、協定税率と、EPA(経済連携協定)を締結した相手国からの産品のみを対象
とした税率があります。
WTO協定上、WTO加盟国・地域に対して一定率以上の関税を課さないことを約束(譲許)している
税率を協定税率(WTO譲許税率)といい、その税率が国定税率より低い場合、WTO全加盟国・地域
からの産品に対し等しく適用されます。本来、協定税率はWTO加盟国・地域に対してのみ適用される
税率ですが、WTO非加盟国であっても、通商航海条約等の二国間条約(自由貿易協定を除く)で最恵
国待遇を約束している国に対しては、WTO加盟国・地域と同様に協定税率が適用されます。
条約に基づく税率には協定税率の他に、EPA締結国からの産品のみを対象とした税率があります。E
PAでは、最恵国待遇による実行税率より低い税率が規定されており、原産地等の条件を満たすことに
より、国定税率及び協定税率に優先してその税率が適用されます。
各国の関税の制度を簡素化して統一しようという動きは、20世紀の初めに欧州で起こりました。19
52年に関税協力理事会(CCC=現在はWCO)が発足し、ベルギーのブリュッセルに本部が置かれ
ました。そして、関税協力理事会品目表(CCCN)が作成され、「関税率表における物品の分類のた
めの品目表に関する条約」(品目表条約)として1959年に発効しました。
CCCN作成後の貿易構造の変化や科学技術の進歩に対応させるとともに、CCCNを採用していなか
ったアメリカ、カナダも含めて商品分類の真の国際的統一を図るために、CCCNに替わる新しい品目
表としてHSが開発されました。これは、1983年に「商品の名称及び分類についての統一システム
に関する国際条約(HS条約)」として採択され、1988年1月に発効しました。HSは、国際貿易
の対象となるすべての商品を網羅するように構成されています。日本では、HS条約の発効とともに、
関税率表をHSに合致させるよう改正し、昭和63年1月1日からこの改正した関税率表を使用してい
ます。