I.中小企業の世代交代を円滑に

今回から事業承継税制を中心に考えていきたいと思います。極めて複雑な税制であるうえに、図表で表 現した方が理解が容易な部分がありますが、なるべく平易に触れていきたいと思います。また、私自身、 改正点についての政省令等の読み込みが甘いために生じる表現不足の点については、都度、加筆を行い たいと思いますので、ご容赦ください◆まず、前号でも触れた平成30年度の税制大綱をおさらいしま す。この大綱は「働き方の多様化を踏まえ、様々な形で働く人をあまねく応援する等の観点から個人所 得課税の見直しを行うとともに、デフレ脱却と経済再生に向け、賃上げ・生産性向上のための税制上の 措置及び地方の中小企業の設備投資を促進するための税制上の措置を講じ、さらに、中小企業の代替わ りを促進する事業承継税制の拡充、以下略」という内容でした◆このうち、「中小企業の代替わりを促 進する事業承継税制の拡充」という部分がまさに事業承継税制そのものについて触れている部分です。 拡充という文言があるとおり、従来からあった税制を改正したものであることがわかります。新たに拡 充された税制についての説明書は、従来の税制との相違点が記されたものがほとんどのようですが、旧 税制からどのような拡充が行われたのかに説明が集中しているようですので、ほとんどが割愛できるも のと考えています◆平成21年度に創設された事業承継税制は、制度の複雑さ、要件の厳格化などの理 由で適用件数が伸び悩んでいたのが実情です。そこで、今回の措置が講じられることになったと思われ ます。以前から、中小企業経営者の高齢化が急速に進展する中で、日本経済の基盤である中小企業の円 滑な世代交代を通じた生産性向上は、日本にとっての喫緊の課題でした◆世代交代はしたいが、様々な ことが支障となって思うような計画を進めることができないという悩みを税制の面から支援するために 拡充された制度といえます。つまり、重い税負担を緩和することによって側面から世代交代を促すとい う狙いです。具体的な内容については次号以降としたいと思います。

(起業コンサルタント 浦邊 謙佑) HP:ぜいりし.com 浦邊剛至税理士・行政書士事務所 ブログ:会計事務所の一日