I.平成30年度税制改正大綱
前号まで、起業準備中の方や既に起業された方に参考にしていただけそうな事柄について触れてまいり
ました。特に後半では、消費税の納税義務について重点的に取り上げました。税率以外にも様々な改正
があったことについてはご理解いただけたと思います。このように起業後は、毎年の税制改正について
の注意も必要となってきます◆その際に注意すべき点は、改正の内容そのものについてはもちろんのこ
とですが、その改正項目がいつから適用になるのかということです。特に租税特別措置法は、あくまで
も時限立法としての性格を持っていることから、自社にとって有利な税制を利用しようと思った場合に、
既に期限切れになっていたり、あるいはその逆であったりということがしばしばあります◆例えば、平
成30年度税制改正大綱は平成29年12月22日に閣議決定され、平成30年1月に召集された通常
国会において、衆議院・参議院の両院で審議された結果、平成30年3月28日の参院本会議で可決成
立し、一部を除き原則4月1日から施行されています。この際、実務で問題となるのが、3月28日に
成立したものが30年1月1日に遡及して適用されるのかどうかということです。稀ではありますが、
そういった場合があるのも要注意です◆本年度の改正大綱では、「働き方の多様化を踏まえ、様々な形
で働く人をあまねく応援する等の観点から個人所得課税の見直しを行うとともに、デフレ脱却と経済再
生に向け、賃上げ・生産性向上のための税制上の措置及び地域の中小企業の設備投資を促進するための
税制上の措置を講じ、さらに、中小企業の代替わりを促進する事業承継税制の拡充、観光促進のための
税として国際観光旅客税の創設等を行う。以下略」という内容でした◆非常に明確なようで、その内容
は具体的に列挙されてはいるものの、専門家である私たちにとっても勉強をしなければならないのが現
実です。なかには、私や私たちの業界そのものが、疑義を感ずるものも含まれているわけですからなお
さらです。「それ違うんじゃないの」と突っ込みを入れたくなるようなものもあるわけです。次号から
は、本年度改正のうち、事業承継税制を中心に考えてみたいと思います。
II.住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?
個人が空き部屋などを有料で旅行者に宿泊させるいわゆる「民泊」は、一般的に、利用者の安全管理や
衛生管理、また、一定程度の観光サービスの提供等を伴うものですので、単なる不動産賃貸とは異なり、
その所得は、不動産所得ではなく、雑所得に該当します。
その民泊ですが、近年急増する訪日外国人観光客の多様な宿泊ニーズへの対応や、少子高齢化社会を背
景に増加している空き家の有効活用といった地域活性化の観点から期待が高まり、急速に増加している
一方、安全面・衛生面の確保がなされていないこと、騒音やゴミ出しなどによる近隣トラブルが社会問
題となっていることなどに対応するため、一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及を図るもの
として、新たに住宅宿泊事業法(民泊新法)が制定されました。
民泊新法では、制度の一体的かつ円滑な執行を確保するため、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」
「住宅宿泊仲介業者」という3つのプレーヤーが位置付けられており、それぞれに対して役割や義務等
が決められています。
【住宅宿泊事業者】
・都道府県知事等への届出が必要
・年間提供日数の上限は180日(泊)とする
・家主居住型の場合は、住宅宿泊事業の適正な遂行のため、衛生確保措置、宿泊者に対する騒音防止の
ための説明、近隣からの苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示等を義務付け
・家主不在型の場合は、住宅宿泊事業者に対し、上記措置(標識の掲示は除く)を住宅宿泊管理業者に
委託することを義務付け
・都道府県知事等は、住宅宿泊事業者に係る監督を実施
【住宅宿泊管理業者】
・国土交通大臣の登録が必要
・住宅宿泊事業の適正な遂行のため、衛生確保措置、宿泊者に対する騒音防止のための説明、近隣から
の苦情への対応、宿泊者名簿の作成
・備付け等の代行と住宅宿泊管理業の適正な遂行のための措置として管理受託契約の内容の説明、契約
書面の交付等を義務付け
・国土交通大臣は、住宅宿泊管理業者に係る監督を実施
・都道府県知事等は、住宅宿泊管理業者が代行する「住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置」に係る
監督を実施
【住宅宿泊仲介業者】
・観光庁長官の登録が必要
・住宅宿泊仲介業の適正な遂行のため、宿泊者への契約内容の説明等の措置を義務付け
・観光庁長官は、住宅宿泊仲介業者に係る監督を実施
「住宅」とは次に掲げる設備要件と居住要件を満たしている必要があります。
○設備要件…台所・浴室・便所・洗面設備
○居住要件…「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行われている家屋」
「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」
人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定める180日の算定方法は以下のとおりとなり、
届出住宅ごとに算定します。
1年間 = 毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで
1日 = 正午から翌日の正午まで
III.会計freeeと人事労務freeeの連携
給与計算は、税金(所得税、住民税)や社会保険料等の計算も必要なため複雑です。人事労務freeeでは、
入力された給与情報を元に税金・社会保険料が自動的に計算されます。クラウド型ソフトですので、法
改正による税率・保険料率の変更も、その都度反映されます。
従業員自身が勤務時間をfreee上で入力すると、入力された内容で自動で給与額の計算が行われます。
勤務時間だけでなく、住所などの給与の基礎情報の入力も可能です。
従業員は従業員用アカウントを使ってfreee上で給与明細の確認ができます。そのため給与支払のたびに
給与明細を印刷して従業員に配布するコストを削減できます。給与の支払日のメール通知機能もあります。
会計freeeと人事労務freeeを連動させると、計算された給与や税金・保険料は会計freeeに「取引」とし
て反映されますので、給与計算の結果を会計に転記する必要がなくなります。
(Webデザイナー)
IV.これから起業をする法人・個人事業主向けの助成金
今回ご紹介するのは「生涯現役企業支援助成金」です。
この助成金は、生涯現役として働き続けられる社会の実現を目指し、40歳以上の方の起業を支援する
もので、従業員の雇入れに関する費用を助成する「雇用創出措置分」に加え、生産性を向上させた場合
に別途支給される「生産性向上助成分」があります。
「雇用創出措置分」は、起業日の年齢が40歳以上の方が「雇用創出措置に係る計画書」を提出し、事
業運営のために要件に達した労働者を新たに雇い入れた場合、その募集・採用や教育訓練の実施に要し
た費用の一部を助成するものです。
助成額は、起業時の年齢区分が60歳以上の場合、2/3の助成率(ただし上限200万円)年齢区分
が40〜59歳の場合、1/2の助成率(ただし上限額150万円)となります。
支給までの流れとしては、
起業
→ 起業日から起算して11か月以内に「雇用創出措置に係る計画書」の作成・提出し労働局長の認定
を受ける(起業者がその事業分野で通算10年以上の職務経験がある、起業にあたって金融機関の
融資を受けている等の要件があります)
→ 計画期間(12か月以内)に60歳以上の者を1名以上、40歳以上60歳未満の者を2名以上ま
たは40歳未満の者を3名以上(40歳以上の者1名と40歳未満2名でも可)を新たに雇い入れる
→ 雇用創出措置に係る支給申請書の提出(申請書提出日において計画期間内に雇い入れた対象労働者
の過半数が離職していないことが必要です)
→ 計画書が提出された会計年度の3年度後の会計年度が終了した日の翌日から起算して5か月以内に
生産性向上に係る支給申請書の提出(ただし雇用創出措置分の助成金の支給を受けた事業主に限り
ます)
他にも細かい支給要件がありますので、くわしくは厚生労働省のホームページをご確認ください。
(社会保険労務士)
V.ノーダウト〜LADY
今年度に入っても、相変わらず将棋人気は衰えないようだ。羽生永世七冠の誕生、そして国民栄誉賞の
受賞と続いたが、やはり高校生となった藤井プロの存在が大きいことに間違いはないだろう。
そんな中、一つの残念なニュースがあった。一般紙でも報じられていたのでご存知の方も多いだろうが、
女性初の将棋棋士を目指した里見香奈女流が年齢制限により奨励会を今春、退会となった。
女流棋士界にあっては、押しも押されぬ第一人者であるにもかかわらず、夢はいったん途切れてしまっ
たことになる。それほどの実力をもってしてもプロへの登竜門である奨励会の三段リーグの厚い壁が立
ちはだかったことになる。
現在では、奨励会退会後であってもプロ棋士になる道は必ずしも閉ざされているわけではないので、里
見女流の今後の去就が注目されるところでもある。女流としてその道を究めていくのか、それとも何ら
かの方法で再度棋士を目指すのか。
現代将棋はソフト=AIの台頭により新しいフェーズに入ったといえよう。そこで、個人的な提案なの
だが、棋風改善を図り、新しい姿を見せてほしい。
同郷の「Official髭男dism」の楽曲でも聴きながら、気分転換してはどうだろうか。
余計なお世話かもしれないが。
(覆面ライター 辛見 寿々丸)