I.メジャーリーガーの事業計画

前号まで、起業に際して計画に組み込んでおくべき消費税について触れてきました。法人の形態で起業 した場合は、法人設立初年度あるいは翌年度から消費税の納税義務が生じる場合があること。そして、 個人事業の形態で起業した場合は、起業後翌年から納税義務が生じる場合があることについてはご理解 いただけたことと思います◆消費税というと、とかくその税率に注目が集まりがちですが、これらの項 目も、消費税法の改正によって設けられたものです。消費税に限らず税制は毎年改正が行われますので、 起業後は税制改正にも注目しておく必要があります。とはいえ、上記のような改正はメディア等で大き く報じられることはほとんどありませんので、要注意です◆小欄では、何回かにわたり事業計画書作成 の重要性とその利用方法や効果について触れてきました。事業計画書=堅苦しいものというイメージに とらわれず、取り組んで欲しいと思います。そこで、最近目にしたものの中から計画書を2パターンご 紹介したいと思います。なぜか、野球に関するものです◆その1は、メジャーリーグで鮮烈なデビュー を果たした大谷選手のものです。というよりは、母校である花巻東高校で使用しているものだそうです。 これは、81マス(=将棋盤のイメージ)の中央に到達すべき目標を記入し、それを実現するための要 素を展開させて、シートに書き込んでいくものでメディアで紹介されたものです◆非常に科学的に、考 えやなすべきことが整理できる様式になっています。高校入学時に作成し、卒業時に達成すべき目標を 記入することから中期の計画といえるでしょう。これを一定期間ごとに繰り返していくことにより、何 がどうなのかということが一目瞭然で、原因分析にも適しています◆その2は黒田元投手のものです。 こちらは、計画書というよりは考え方といったほうが良いのかもしれませんが、中期的かつ具体的であ る点では明快かもしれません。まず、高校時代。野球の技術を評価されて入学したものの、優れた投手 が他に複数いたため、エースナンバーを背負うことはあきらめ、投手として高校生活を全うすることと しました◆次は、進学した大学時代。大学野球では高校野球と異なり、先発投手が最低2名必要である ことから、そのうちの1人になること。必ずしも、エースにこだわらなくとも出場の機会は得られると の考えで練習に励むことにしました◆そして、プロ入り後。同期入団の青山学院大卒の沢崎投手がいき なりの新人王を獲得したものの、次第に自分自身のスタイルがプロの世界に向いていることを確信し、 球団のエースを目指すこととしました◆その後のメジャーリーグでの活躍は、報じられているとおりで すが、彼の場合の計画は常に低い目標を設定し、それをクリアするたびにバージョンアップしていくも のです。こちらも科学的に裏付けのあるものです◆野球選手であっても、プロである以上、その立場は 起業した個人事業主にほかなりません。どちらの方式が良いのかはわかりませんが、自分なりにアレン ジすれば、十分に参考になるのではないかと思い取り上げてみました。

(起業コンサルタント 浦邊 謙佑) HP:ぜいりし.com 浦邊剛至税理士・行政書士事務所 ブログ:会計事務所の一日