V.心に刺さる歌

ロジャー・フェデラー。といえば、史上最高のテニスプレイヤーと呼ばれ、現在も自己の持つ記録を次 々と更新している選手だ。 いつだったか、彼が全豪オープンで錦織圭選手と対戦したことがあった。試合会場はフェデラー選手の 大応援で騒然とし、錦織選手にとってはかつて体験したことのなかったようなアウェーでの試合を余儀 なくさせられたことがあった。 ある時、日本のテニス関係者が「日本の男子テニス界はダメだ」というような旨をフェデラー選手に嘆 いたことがあったそうだ。時期的には、錦織選手が台頭する前だったことは想像できる。 そう嘆かれたフェデラー選手は、「何をばかなことを言っているんだ」とその関係者の言葉を一蹴した。 続けて、「日本にはクニエダという世界最高の選手がいるじゃないか」と。クニエダとは、もちろん車 いすテニスの国枝慎吾選手のことだ。さらに「僕の実績はとてもクニエダにはかなわないんだ」と続け たそうだ。 そんな逸話を聞くにつけ、フェデラー選手のプレースタイルや実績だけでは理解できないような人気の 秘密がよくわかる。 そんな中、パラリンピックスキーチームの監督を務める荒井秀樹氏のインタビューを聞く機会を得た。 本稿執筆時、パラリンピックの開催前であるため、結果を交えながら次号で続けたいと思う。 ところで、今大会の五輪のテーマ曲の歌詞は心に刺さる。惜しくも直木賞の受賞は逃したもののSao riの感性がほとばしる。特に、「夢を追う君へ」から「いつだって物語の主人公は笑われる方だ 人 を笑う方じゃない」と続く部分。 僕もそう思う。歌詞にあるとおり「物語の主人公が立ち上がる限り、物語は続く」。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)