I.いつから生じる 消費税の納税義務
今回は消費税の納税義務の判定についてのまとめです。実務上行う、判定の順序に関しては前号のとお
りです。繰り返しになりますが、@基準期間における課税売上高による判定⇒A特定期間中の課税売上
高等による判定⇒B相続・合併・会社分割等の特例による判定⇒C資本金が1000万円以上の新設法
人の特例⇒D特定新規設立法人の特例による判定、という流れでした。このうちBについては起業にあ
たっては割愛しました◆大雑把ではありますがそれぞれについて触れていきます。@については、基準
期間の課税売上高が1000万円を超えるかどうかによって判定を行います。基準期間とは、個人事業
の場合は前々年、法人の場合は前々期となります。注意点としては、個人事業の場合は年換算の必要は
ありませんが、法人の場合は年換算が必要な点でした◆Aについては、基準期間の課税売上高が100
0万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1000万円を超える場合には、その年または
その事業年度は消費税の納税義務が生じます。ただし、特定期間中の課税売上高に代えて特定期間中の
給与等の支払額による判定も認められています。また、特定期間とは個人事業者は前年の1月1日〜6
月30日、法人は原則として直前期の上半期となります◆Cについては、法人のみについての判定とな
ります。期首の資本金が1000万円以上の新設法人は、基準期間のない事業年度については無条件に
消費税の納税義務が生じます。従って、基準期間のある事業年度については、@の判定を行うことにな
ります◆Dについては、大規模事業者等(課税売上高が5億円を超える規模の事業者が属するグループ)
が、50%超の持分議決権など有する法人を設立した場合には、その新規設立法人の資本金が1000
万円未満であっても、基準期間のない事業年度については消費税の納税義務が生じることとなります◆
消費税は税の転嫁を予定している税であることから、納税義務の有無についてはその課税期間開始前に
把握しておく必要があります。そのため、上記のような判定を行うこととされています。起業プラン作
成に際しては、いつから消費税の納税義務が生じるのかを計画に組み込んでおく必要があります。
II.税理士の活用方法を見直す
この号が出るころはすでに確定申告のシーズンが終わっているころですが、税理士のお仕事としてまず
頭に浮かぶのが確定申告という人も多いと思います。
今回は税理士ってどういう仕事をするのかを少し書きますね。
税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し
@ 税務代理
A 税務書類の作成
B 税務相談
を行うことを業とすると税理士法に定められています。
なんだか難しい表現ですが、他人の代理で税金の計算をして、必要な書類をつくって申告をしたり、税
金の相談にのったりするのが税理士のお仕事です。
税理士でない人が確定申告書を作成したり税務相談を行ったりすると税理士法違反で逮捕されてしまう
こともあります。
たとえ無報酬であっても、税理士の業務を反復継続して行うこと、反復継続して行う意思をもって行う
ことは法律違反となります。
もちろん他人の求めに応じて税理士でない人が確定申告等を行うのがいけないのであって、自分のため
に税理士でない人が確定申告を行うことは何の問題もありません。
国税庁のe-tax(電子申告システム)の機能も充実していますし、会計ソフト等を利用して確定申告書を
作成している方も多いと思います。
では、こんなにソフトが発達したら、税理士の仕事がなくなってしまわないかって?
いえいえ、大丈夫です。
税務書類の作成という面だけなら税理士の重要性は低くなっていくでしょう。でも税理士の仕事の本質
は書類作成ではなく、各種の相談や提案にあると思うのです。税理士は毎年変更される税に関する法律、
消費税の課税方法、今後の設備投資計画、法人化した場合のメリットデメリット等、いろいろな知識や
経験を駆使してクライアントに最適な方法をご提案できるのです。
世の中にはいろいろなコンサルタント等が存在しますが合法的に具体的な税額の計算までしてご提案を
できるのは税理士だけです。また、最適な税金を計算するためには、経営の内情をよく知らなくてはで
きません。税理士は経営者の信頼できるパートナーであるべきだとも思います。
書類作成は事後の作業で、相談やご提案は事前の作業になります。よりよい経営をするためには事前の
準備が大事なのではないでしょうか。
もともと、税理士に仕事を依頼している方も、税理士はお金がかかるから自分でするよという方も、今
一度税理士の活用方法を見直してみてはいかがでしょうか。
III.Airレジとfreeeの連携
スマートフォンやタブレット端末がそのままレジになるPOSレジアプリ「Airレジ」と、クラウド会計ソ
フトの「freee」を連携させると、より便利に使うことができます。
連携の操作は、まずfreeeにログインして口座登録でAirレジを選択します。Airマーケットにログイン
して「Airレジと連携する」ボタンをクリックしAirレジとの連携を「許可する」をクリックすると連携
が完了します。
連携が成功すると、レジ締め時刻後にAirレジでの「売上金額合計」「会計修正金額」「レジチェック時
の過不足金額」の情報が自動的に会計freeeに送信され、会計freeeの管理画面上で利用できるようにな
ります。
連携以前のデータは自動では送られないため、パソコン版のAirレジ(バックオフィス)からcsvデータを
ダウンロードしてfreeeのひな型に合わせて成型し、freeeにアップロードします。
(Webデザイナー)
IV.就業規則もメンテナンスを
今月は、先般参加した社労士向けのセミナーに行って感じたことをお伝えします。
今回参加したセミナーは、社労士も、労働基準法の内容のみで判断せず、労働契約法、憲法、民法、刑
法の考え方を取り入れて、就業規則や労務トラブルを考えるというセミナーでした。
今回参加して感じたのは、労働基準法だけにとらわれない考え方が必要ということです。
社労士は、まず依頼者からご相談があると、労働基準法、各種通達、判例、今までの経験等の見解を総
合して改善策を提案することが多いです。
しかし、労働契約とは民法の契約行為となるので、民法の内容を知ることで、よりお客様の立場を踏ま
えた改善策を考えられるのではないかと感じています。
もう1つは、就業規則のメンテナンスの重要性です。
就業規則といえば、インターネットを検索すればいろいろな「ひながた」があり、とりあえず「ひなが
た」を使用している方も多いと思います。
また、作成にあたってもできるだけ安く簡単な内容でよいと思っている方、労働関連の法律や労働を取
り巻く環境が劇的に変化している現在ですが、何十年前に作成した就業規則をそのままにしている方も
多いと思います。
現在、インターネットで労働者も労働法について知識をつけている中、まずは就業規則の見直しをおす
すめします。2、3年に一度人間ドックならぬ就業規則ドックをしてみましょう。
見直しは、税理士、行政書士、社労士でタッグを組んで問題を解決するAXIS−Kにご相談ください。
(社会保険労務士)
V.心に刺さる歌
ロジャー・フェデラー。といえば、史上最高のテニスプレイヤーと呼ばれ、現在も自己の持つ記録を次
々と更新している選手だ。
いつだったか、彼が全豪オープンで錦織圭選手と対戦したことがあった。試合会場はフェデラー選手の
大応援で騒然とし、錦織選手にとってはかつて体験したことのなかったようなアウェーでの試合を余儀
なくさせられたことがあった。
ある時、日本のテニス関係者が「日本の男子テニス界はダメだ」というような旨をフェデラー選手に嘆
いたことがあったそうだ。時期的には、錦織選手が台頭する前だったことは想像できる。
そう嘆かれたフェデラー選手は、「何をばかなことを言っているんだ」とその関係者の言葉を一蹴した。
続けて、「日本にはクニエダという世界最高の選手がいるじゃないか」と。クニエダとは、もちろん車
いすテニスの国枝慎吾選手のことだ。さらに「僕の実績はとてもクニエダにはかなわないんだ」と続け
たそうだ。
そんな逸話を聞くにつけ、フェデラー選手のプレースタイルや実績だけでは理解できないような人気の
秘密がよくわかる。
そんな中、パラリンピックスキーチームの監督を務める荒井秀樹氏のインタビューを聞く機会を得た。
本稿執筆時、パラリンピックの開催前であるため、結果を交えながら次号で続けたいと思う。
ところで、今大会の五輪のテーマ曲の歌詞は心に刺さる。惜しくも直木賞の受賞は逃したもののSao
riの感性がほとばしる。特に、「夢を追う君へ」から「いつだって物語の主人公は笑われる方だ 人
を笑う方じゃない」と続く部分。
僕もそう思う。歌詞にあるとおり「物語の主人公が立ち上がる限り、物語は続く」。
(覆面ライター 辛見 寿々丸)