V.選手たち・監督たちのドラマ

毎年恒例のことではあるが、年が明けると、学生スポーツが花盛りだ。箱根駅伝に始まり、大学ラグビ ー、高校サッカー、高校ラグビー、高校バレーボールなどがその代表格だろう。4連覇を果たした青山 学院大学も見事だが、帝京大学の9連覇は前人未踏どころではない驚きだった。両校とも名将率いる学 生たちの期待を裏切らない活躍には賞賛の言葉しか見当たらない。 そんな中、僕が今年注目したのは高校ラグビーと高校バレーボールだ。バレーボール男子では、熊本の 鎮西高校が見事に栄冠を勝ち取った。同校の練習場である体育館は先の熊本地震によって倒壊してしま ったそうだ。結果、選手たちは他校、時には県外にも練習場を求めての苦労があったと聞いた。さらに、 これで高校総体と合わせての2冠というのだからそれがどれほどのものだったかは想像もつかない。 もう一つの注目は、高校サッカーだ。得点王を獲得した飯島選手の活躍も見事だったが、注目は優勝し た前橋育英高校の校長でもある山田監督だった。 というのも、あと一歩で優勝を逃すことから「世界一勝負弱い監督」という、本人にとってはうれしく ない称号の持ち主であったことにもよるのであるが、そのキャリアがドラマチックこの上なかったから だろう。 自身、大学生時代は高校教員を目指していたのだが、その試験日とサッカーの試合日が重なってしまっ た。監督に決断を求められた当時の山田監督は、サッカーの試合を選択した結果、教員の道をあきらめ たのであった。そこに舞い込んだのが、前橋育英高校からの誘いだった。そこからの道のりは、ドラマ 「スクールウォーズ」ばりであったことは、メディアでも紹介されているとおりだ。 両校の監督、選手にはあらためておめでとうと言いたい。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)