I.特定新規設立法人の特例

引き続き、消費税の納税義務の判定について触れます。再確認すると、納税義務の判定は、@基準期間 における課税売上高による判定⇒A特定期間中の課税売上高等による判定⇒B相続・合併・会社分割等 の特例による判定⇒C資本金が1000万円以上の新設法人の特例⇒D特定新規設立法人の特例という 流れでした◆そして、これから起業を考える皆様や起業準備中の皆様についてはBを割愛し、C⇒D⇒ Aの順で実務上は判定を行うことになることを付け加えました。前号では、このうちCの判定について 取り上げました。設立初年度であっても納税義務が生じる場合があることはご理解いただけたと思いま す。つまり、Cの判定では資本金が1000万円以上の新設法人の場合が該当します◆今回はDについ て触れたいと思います。「特定新規設立法人」とは、平成26年4月1日以後に設立した新規設立法人 (その事業年度の基準期間がない法人で、その事業年度開始の日=期首における資本金が1000万円 未満の法人)のうち、次のイ、ロのいずれにも該当する法人です。イとロについては後述しますが、こ の判定に該当すれば、Cの判定=資本金1000万円未満であっても設立初年度から納税義務が生じる ということです◆まず、イは他の者によりその新規設立法人の株式等の50%超を直接又は間接に保有 される場合など、他の者によりその新規設立法人が支配される一定の場合(特定要件)に該当すること となっており、ロは上記イの特定要件に該当するかどうかの判定対象者の基準期間相当期間の課税売上 高が5億円を超えていることとなっています◆なんだかとってもわかりにくいですね。簡単に言えば、 課税売上高が5億円を超える規模の事業者グループが、新規設立法人の株式の50%超を保有するなど、 その新規設立法人を支配している場合には、基準期間がない事業年度については納税義務があるという ことです。この場合の事業者グループの支配要件の判定については紙面の関係上、割愛しますが、事業 者単位で5億円の判定をすればよく、グループ全体の課税売上高を合計する必要はありません◆以上の ように、C⇒Dの判定に該当した場合には、設立初年度から消費税の納税義務が生じます。私のもとに 寄せられた案件では、Cの判定はクリアーしたもののDの判定が必要なケースが散見されました。設立 初年度から消費税の納税義務者となることもあることを前提に、起業のプランを構築する必要はあると 思います。新規に設立した法人の場合であっても、必ずしも設立後2期は消費税の納税義務がないわけ ではないわけですから。次号では、Aの判定について触れます。

(起業コンサルタント 浦邊 謙佑) HP:ぜいりし.com 浦邊剛至税理士・行政書士事務所 ブログ:会計事務所の一日