I.新規設立法人の消費税の判定

前号から、消費税の納税義務の判定について触れています。おさらいをすると、@基準期間における課 税売上高による判定⇒A特定期間中の課税売上高等による判定⇒B相続・合併・会社分割等の特例によ る判定⇒C資本金が1000万円以上の新設法人の特例⇒D特定新規設立法人の特例という流れでした ◆前回は@について触れましたので、今回からA以降について触れていきたいと思います。また、上記 のうち、Bについては、これから起業を考える皆様や起業準備中の皆様には基本的に関係がないと思わ れますので割愛します。さらに、起業を前提とした場合C⇒D⇒Aの順で判定を行うことになるため、 この順でそれぞれについて見ていくことにします◆@による判定では、基準期間の課税売上高が100 0万円以下であれば、消費税の納税義務はありませんでした。新設法人の場合は基準期間そのものがな いため、消費税の納税義務はないと思われるかもしれません。しかしながら、新設法人であっても、上 記C⇒Dの判定に注意する必要があります。この判定に該当すれば、設立初年度から消費税の納税義務 が生じることになります。これが法人の形態で起業する場合の消費税についての注意点です◆まず、C について見てみると、事業年度開始の日=期首の資本金が1000万円以上の新設法人は基準期間のな い課税期間については無条件に消費税の納税義務が生じます。つまり、基準期間のない設立初年度及び 設立第2期は消費税の納税義務者になるということです。それ以降は、基準期間が存在しますからその 期間の課税売上により判定します◆法人の形態で起業する場合には、資本金をいくらにするのかによ って、消費税の納税義務が生じるのか否かにかかわってきます。1000万円未満の資本金で起業する ことが、実務上はほとんどと思われますが、課税売上高が1000万円超となっているのに対し、資本 金は1000万円以上となっていますから、超と以上を勘違いしないよう注意が必要です。バカバカし いことと思われるかもしれませんが、実際に起こりがちなこととも思えますので、あえて取り上げてお きます◆このように、法人の形態で起業した場合は設立初年度であっても消費税の納税義務が生じる場 合があります。また、D⇒Eの判定については少し複雑になりますが、次号以降で続けたいと思います。

(起業コンサルタント 浦邊 謙佑) HP:ぜいりし.com 浦邊剛至税理士・行政書士事務所 ブログ:会計事務所の一日

II.配偶者控除が変わります

今年も年末調整の季節となりました。 【年末調整とは】 年末調整は給与所得者の1年分の所得税の精算を行う手続きです。 日本は申告納税制度をとっているので、本来所得税は自分で計算して申告・納付すべきものですが、給 与所得者については精算、納付の手間を会社が代わって行ってくれるのです。 これは、1年に一度の納税だと納税額が多額になるため、月々給与から源泉所得税として引くことで、 税金の徴収もれを防ぐとともに、税務署が大勢の給与所得者の確定申告に対応しきれないことから、会 社がその納税、税額計算の負担を肩代わりしている制度とも言えます。 【年末調整でできること】 本来、自分でやるべき所得税の精算を会社等が代理で行っているので、年末調整でできることは限定さ れています。 社会保険料控除、保険料控除、配偶者控除、扶養控除、2年目以降の住宅ローン控除などは年末調整で 行うことができます。 【年末調整でできないこと】 一方、医療費控除、寄付金控除、住宅ローン控除の初年度、配当控除などは年末調整ではできませんの で、自分で確定申告することが必要になってきます。 また、給与以外の所得があったり、不動産を譲渡したりした場合も自分で確定申告しなくてはなりませ ん。 【配偶者控除の変更】 平成30年分以降の所得税では配偶者控除等の改正があります。配偶者控除の適用を受ける納税者本人 の給与収入が1220万円を超える場合は配偶者控除が受けられなくなります。(現行は納税者本人の 所得に関係なく配偶者の給与所得が103万円以下なら適用あり) また、配偶者特別控除については配偶者の給与収入の上限が引き上げられます。しかし、納税者本人の 所得によって控除できる金額が異なる仕組みとなります。 つまり平成30年以降は、納税者本人の収入と配偶者の収入の両方の組み合わせで控除額が異なること になります。 【扶養控除申告書の提出について】 平成30年分の扶養控除申告書を年末調整と同時期に会社に提出する人も多いかと思います。 給与収入が1200万円前後の方が、今までどおり配偶者控除を受けるつもりで控除対象配偶者の欄に 記入して提出した場合、年末に給与収入が1220万円を超えていると配偶者控除を受けられなくなり 年末調整で税金が徴収されることになる場合がありますので注意が必要です。

(税理士・CFP 廣崎 英子) HP:横浜の税理士 廣崎英子税理士事務所 ブログ:税理士 ときどき ランナー

III.レシート類の自動認識&自動入力

クラウド会計ソフトでは、これまで別々に管理していた証憑書類と帳簿を一緒に管理することで効率化 を実現しています。 例えば会計freee の場合、「ファイルボックス」というファイル管理機能を使い、領収書や請求書の画 像やデータを取り込むことで、書類の管理と記帳を効率化します。 紙で受け取ったレシートなどは、スマートフォンのカメラで撮影したり、複合機や専用のスキャナで取 り込み、自動認識させます。複数の書類を一つの画像から取り込むことも可能です。 Google ドライブで共有された書類を直接取り込んだり、請求書のデータが添付されたメールを専用の アドレスに転送することで、添付ファイルをファイルボックスに直接取り込むこともできます。 画像内の文字からの自動入力(OCR)では、画像内の文字や数字を自動で認識して、取引情報として入力 します。書類をなるべく綺麗に保管して、綺麗に撮影・スキャンすることで、自動入力の精度は高まり ます。 また、ファイルをアップロードする際に記入できるメモの内容から、勘定科目や品目を自動で推測して 入力することもできます。 必要であれば内容を修正し、取引を登録します。取り込んだ書類の画像を見ながら作業を行いますので、 煩雑さが軽減されます。 帳簿と書類を紐付けて管理することで、経費精算や支払いの漏れを減らせることも、ファイル管理機能 を利用するメリットの一つです。

(Webデザイナー)

IV.労働時間等見直しガイドラインが改正されました

皆様は「労働時間等見直しガイドライン」というものがあるのをご存じですか? このガイドラインは、ワーク・ライフ・バランスの実現に向け、労働時間、休日数、年次有給休暇の取 得に関する事項などを労働者の健康と生活に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものへと改善 する目的で策定されました。 内容は、ワーク・ライフ・バランス実現のため事業主に求められる取組事項(労使間の話し合いの機会 をつくる、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備、所定労働時間の削減、在宅勤務・テレワーク等の 活用)についてが定められています。 今回の改正は、キッズウィーク(地域ごとに夏休みなどの一部を他の日に移して学校休業日を分散化す る取組)への対応や労働者が裁判員として刑事裁判に参画しやすくするとともに、本年6月に閣議決定 された「規制改革実施計画」で示された転職しても転職が不利にならない仕組みをつくる等に対応する ためです。 その改正点は次のとおりです。 1.「地域の実情に応じ、労働者が子どもの学校休業日や地域のイベント等に合わせて年次有給休暇を取 得できるよう配慮すること」が盛り込まれました。 2.「公民権の行使又は公の職務の執行をする労働者について、公民としての権利を行使し、又は公の職 務を執行する労働者のための休暇制度等を設けることについて検討すること」が盛り込まれました。 3.「仕事と生活の調和や労働者が転職により不利にならないようにする観点から、雇入れ後初めて年次 有給休暇を付与するまでの継続勤務期間を短縮すること等について事業場の実情を踏まえ検討すること」 が盛り込まれました。

(社会保険労務士)

V.将棋界の常識を覆す

今年は、将棋界に注目が集まった一年だった。その要因は言うまでもなく、史上最年少でプロ棋士とな ったうえに、無敗のまま連勝記録を更新してしまった藤井聡太四段の存在だ。テレビの情報番組が将棋 番組のようになったり、将棋番組がグルメ番組のようになったりと、かつての常識を覆すことになった。 羽生棋聖でさえデビュー当時は、それほど注目されたわけではなかった。メディアが注目したのは、高 校に進学後の対局数が増え、通信制高校への転校を余儀なくされた頃だったと思う。 藤井四段の登場が、将棋界の構図を変える一因となったことは間違いなさそうだ。というのも、菅井王 位・中村王座といった若手が、連続して羽生棋聖からタイトルを奪取したからだ。 その遠因は、非公式戦とはいえ、藤井四段が当時三冠を保持する羽生氏に勝利したことにあったのでは ないだろうか。というのも、中村王座の師匠である、故米長永世棋聖は、かつて、タイトル戦を前にし た中村王座に対して、「対戦相手である羽生を尊敬するな」と言ったそうだ。そうはいっても、羽生棋 聖に憧れてプロ棋士になった中村王座にとっては、なかなか割り切れるものではなかったはずだ。2度 挑戦したもののタイトルの獲得はかなわなかったという現実がそれを物語っている。 そんな雰囲気を払しょくできたのが、藤井四段の存在だ。どんな相手に対しても臆することなく最善を 尽くす。そこに一点の曇りもない。そんな姿にヒントを得たのではないかと推察する。 一方、タイトルを続けて奪われた羽生棋聖。おそらく、研究方法の模索中ではないだろうか。 その研究が軌道に乗った時の復権は間違いない。 公式戦での羽生棋聖と藤井四段の対局。その日がやってくるのは意外に早いのではないだろうか。僕は そう思う。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)