I.複雑化する消費税
これから起業を考える皆様や起業準備中の皆様が、おさえておかなければならないことについて様々触
れてきましたが、意外な落とし穴になるのが消費税の問題です。エッと思われる方もいらっしゃるかも
しれませんが、近年の消費税法の改正によって納税義務の判定が複雑になってきました。簡単に触れて
おきたいと思います◆まず、納税義務の判定の大雑把な流れは、@基準期間における課税売上高による
判定⇒A特定期間中の課税売上高等による判定⇒B相続・合併・会社分割等の特例による判定⇒C資本
金が1000万円以上の新設法人の特例⇒D特定新規設立法人の特例となります。基準期間とは、個人
事業者の場合は原則として前々年の課税売上高のことを、法人の場合は原則として前々事業年度の課税
売上高のことをいいます◆新規開業の個人事業者の場合、開業した年とその翌年については基準期間の
課税売上高がありませんから消費税の納税義務はありません。開業した年の翌々年については、開業し
た年が基準期間となるため、その課税売上高により納税義務を判定することになります。個人事業者の
場合は、基準期間の中途で事業を開始した場合であっても、その基準期間中の課税売上高を年換算する
必要はありません◆例えば、前々年の10月1日に開業した個人事業者で、基準期間である前々年の課
税売上高が300万円であったとします。この売上は3か月の実績ですから、年換算すれば1200万
円となりますが、これを年換算する必要はないということです。従って、基準期間の課税売上高はあく
まで、300万円であり、1000万円以下ですからその年の消費税の納税義務は免除されます。ただ
し、上記Aの判定により、納税義務者に該当する場合は納税義務が生じます◆新設法人の場合、設立事
業年度とその翌事業年度については基準期間がありませんので消費税の納税義務はありません。設立3
期目については、設立事業年度が基準期間となりますので、その期間の課税売上高を年換算した金額で
納税義務を判定します。年換算するところが個人事業者とは異なることに注意が必要です◆例えば、前
々年の10月1日に設立した12月決算法人の場合で、その設立事業年度の課税売上高が300万円だ
った場合を考えてみます。この場合は、個人事業者の場合と異なり、300万円を年換算した1200
万円で判定され、基準期間の課税売上高が1000万円を超えるため、消費税の納税義務が生じます。
ただし、上記Aの判定により、納税義務者に該当する場合は個人事業者と同様に納税義務が生じます◆
消費税といえば、とかくその税率に注目が集まりがちですが、税率以外の部分で多くの改正が行われて
きました。起業後は、その改正にも留意する必要があります。今回は、納税義務の判定の@についての
み触れました。A以降については、次号に続きます。