I.さあ 創業

さあ、いよいよ創業です。そこでまず悩むのが、個人事業としてスタートするのか、それとも法人=会 社としてスタートするのかという事業形態の問題です。まず、創業手続きについては、個人の場合は簡 単で費用もかかりません。一方、法人の場合は設立手続きに手間と費用がかかります。そのため、法人 の場合には創業資金に設立にかかる費用を含めておく必要があります◆次に、信用面については、一般 的には法人の方が信用力に優れ、取引先の開拓や従業員の確保といった面では有利といえます。その理 由は、法人の場合は創業時に設立登記という手続きが必要であり、最低限の情報は登記事項となってお り、その情報は誰でも閲覧が可能だからです。手間と費用をかけるだけの見返りは期待できるかもしれ ません◆そして、税金面については、所得が低い場合にはあまり差はありませんが、所得が大きくなる と法人の方が節税効果が高くなります。ただし、税金ではありませんが、法人の場合は厚生年金等の社 会保険に強制加入となっており、法人負担分が生じることも考慮しておく必要があります。こういった 創業後の手続き等に関しては、次回以降で取り上げます◆責任については、個人の場合は無限責任であ り、事業の成果はすべて個人のものとなりますが、事業に万一のことがあると、個人の全財産をもって 弁済しなければなりません。法人の場合は法人と個人の財産は区別されており、出資分を限度に責任を 負います。有限責任ではありますが、代表者は借入などの取引に際し、保証をするケースが多いため、 誤解のないように注意が必要です◆以上が、事業形態をどうするのかについての検討事項です。とりあ えず、個人で創業して、その後に法人化する(法人成といいます)という方法でもよいかもしれません。 ただし、信用面であったり、責任面であったり、自分の予期しなかったことが発生しないとも限りませ んので、いずれの形態を選択するにしてもそれぞれの特徴は理解しておく必要があるでしょう◆最後に もう一点確認しなければならないのが、これから創業しようとしている事業が許認可等が必要かどうか の確認です。飲食店であれば保健所の許可が必要であるなどの基本的な部分については、事前に調査済 みと思われますが、うっかりに注意が必要です。

(起業コンサルタント 浦邊 謙佑) HP:ぜいりし.com 浦邊剛至税理士・行政書士事務所 ブログ:会計事務所の一日

II.税務署への届出、申請は忘れずに

税金関連では税務署に対して各種の届出や申請が必要になります。 たとえば個人事業者が開業した時には「個人事業の開業届書」だけでなく、「青色申告承認申請書」、 「青色専従者給与に関する届出書」、「給与支払事務所等に関する届出書」などを提出しなければなり ません。 「開業届」は事業開始の日から1か月以内に税務署に提出する必要がありますが、遅れてしまっても罰 則はありません。 一方、「青色申告承認申請書」の提出は承認を受けようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に 開業した場合には、開業の日から2か月以内)に提出する必要があり、1日でも提出が遅れるとその年は 青色申告をすることができなくなります。 このように、届出や申請でも期限までに提出をしないと、税制上の特典を受けられなくなったり、有利 な処理方法を選択できなくなったりします。 消費税についてもいろいろな届出や申請書があります。 輸出が多い事業者や、最初に大きな設備投資をする場合であれば、事業を開始したばかりであっても「 消費税の課税事業者選択届出書」を出すことによって課税事業者になり消費税の還付を受けることがで きる場合があります。ただし、一度届出を出すと一定期間は課税事業者のままとなります。 また、消費税の免税事業者が課税事業者になるときには、課税事業者になる前に原則課税か簡易課税に するかを決め、簡易課税が有利な場合には「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。 消費税の「課税事業者選択届出書」や「簡易課税制度選択届出書」は、それを適用する必要がなくなっ た場合には適用をやめようとする課税期間の前の課税期間に「課税事業者選択不適用届出書」や「簡易 課税制度選択不適用届出書」を出す必要があります。 不適用の届出が遅れるとその期間は適用があるものとして取り扱われるので注意が必要です。

(税理士・CFP 廣崎 英子) HP:横浜の税理士 廣崎英子税理士事務所 ブログ:税理士 ときどき ランナー

III.暑中見舞・夏限定ページ用素材集

ホームページで夏限定の商品やセールの告知を行う場合の画像素材を作成しました。 AXIS-Kのホームページからダウンロードしてご利用ください。 ダウンロードページのURL: http://axis-k.com/sozai/summer/index.html

(Webデザイナー 三嶋 由紀江)

IV.有期契約労働者の2018年問題とは?

平成25年4月1日に労働契約法が改正になりました。 その改正のポイントは、有期契約が5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者(パートタイマ ー、アルバイト、契約社員などの名称を問わず雇用期間が定められた社員)の申し込みにより、期間の 定めのない労働契約(無期労働契約)に転換される点です。 25年の改正から5年経過する平成30年(2018年)4月1日より、有期契約労働者の無期転換の 本格的な発生が想定され、今「労働契約法の2018年問題」とインターネットでも話題となっており ます。 なお、この無期転換申込の権利が発生する前に雇止めをすることは、法律上無効になることもあります ので、ご注意ください。 この「労働契約法の2018年問題」にどのように対応すればよいのか、いくつかのポイントをご紹介 します。 【現在の有期契約労働者の実態の把握】 有期契約労働者の人数、更新回数、勤続年数、担当業務の内容を整理する。 【無期転換後の活用方針、労働条件の設定を検討する】 転換後に、通常の正社員とするのか、無期転換社員(有期労働契約時と同じ労働条件で契約期間が無期) とするのか、あるいは多様な正社員(職務限定社員、エリア社員、短時間正社員など)の制度を作成す るか等の社内の整備をする。 【活用方針、労働条件を明確にするため規程の整備】 規程を整備する。 有期契約労働者を雇用する企業は早めの対応をお考えください。

(社会保険労務士 後藤 雅世) HP:後藤社会保険労務士事務所 ブログ:中小事業主と社労士受験生を応援する社労士日記

V.もう一人の天才 つづき

将棋では定石の存在が大きいとされ、初級者はこの定石を学ぶことによって上達していく。 定石は、主に序盤戦術に関するものが多く、将棋そのものの軌跡である。そして、多くの棋士たちが研 究してきた集大成でもある。序盤戦は定石の存在が大きく、かつては中終盤を制する者が対局そのもの を制していた。中終盤の研究に時間を費やすのが一般的と考えられ、終盤での逆転を意味する「羽生マ ジック」なる言葉はそれをよく表している。 ところが、そこに大きな風穴を開けたのが、猛九段だったのである。将棋は、戦法として居飛車戦法と 振り飛車戦法に大別されるのだが、当時の振り飛車党にとっての天敵が居飛車穴熊という戦法であった。 それを打ち破るべく研究されたのが、「藤井システム」という当時の将棋界の常識を覆すような戦法だ ったのだ。 この戦法は、序盤戦からの一手一手を神経質に進めていかなければ、途中で大変な落とし穴が待ってい るという前代未聞ともいえる戦法だった。この戦法をひっさげ、猛九段は将棋界の頂ともいえる竜王位 にまで上りつめたのであった。 猛九段の登場以前は、「終盤は村山に聞け」と言われていたものが、この後「序盤は村山に聞け」と変 遷したほどだから、研究主体の変化もよくわかる。ちなみに終盤の村山は映画化された聖九段であり、 序盤の村山は慈明七段のことであり、現在の棋界の第一人者である羽生三冠は、慈明七段と研究を行っ ている。 その後は、序盤戦の研究がいかに重要なのかが再認識される結果となったわけだ。 人はとかく既成概念や先入観にとらわれてしまいがちだ。それを看破できるのが天才の天才たる所以だ。 もっとも、コンピュータもそんなものは持ち合わせていない。猛九段の登場とコンピュータソフトが、 将棋というボードゲームで人を凌駕する時代の到来とは無縁ではないような気がする。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)