I.グローバル化と保護主義の台頭
以前小欄で、「創業時の時代背景を知っておくことも非常に大事である」と申し上げたことがあります。
再度このテーマに触れる理由は、私の体験からです。「創業」それ自体に夢中になりすぎて、周りがあ
まり良く見えていなかったのではないかという反省点もあるからです。もちろん、未来をすべて見通せ
るわけではないのですが、それなりの予測ができれば様々なことが、肌感覚で分かってくるはずです。
ある程度の事業規模になり、従業員を抱えるとなった場合にはなおさらです。日々の忙しさに追われて
しまって、自分自身の社会的責任も大きくなっていることを忘れてはなりません◆世界の歴史は英国か
ら動くという説があるようですが、まさにその説を裏付けるかのような動きが止まりません。そのスタ
ートは、もちろん「英国のEU離脱」からになるわけですが、離脱の通告は行われたものの、その先を
見通すことが全くできません。そして、メイ首相は離脱の通告後に議会の解散総選挙を表明しましたが、
たとえ与党が勝利したとしても、なおどんな着地を目指しているのかは不明です。すなわち、ハードラ
ンディングなのかソフトランディングなのか、それとも別の方法があるのか。模索が続きそうです◆そ
して、仏の大統領選挙でも考えられない様相を呈してしまいました。EU離脱というテーマはあったも
のの、決定投票に残った二人の候補者は従来の既成政党の表面的な支持を受けないという異例の事態で
した。というよりは、現制度での大統領選挙始まって以来の珍事となってしまったわけです。課題山積
の中、大統領の座に就いたマクロン氏にとっては国民の支持率が非常に気になるところでしょう。とい
うのも今後の政権運営を行うにあたっての、一番のよりどころとなるはずですから◆例えは悪いとは思
いますが、米国のトランプ大統領のように国民の支持率が低い中での議会運営は、非常に困難を伴うこ
とがはっきりしています。仏の選挙結果により、いったんは、自国第一主義・保護主義的な流れはスト
ップしたかに思えますが、予断は許さないでしょう。新大統領の下で課題の解決が進まないとすれば、
国民の不満は、さらに高まるのは必然です。5年後に大統領選挙が行われることは間違いありませんか
ら、猶予はあまりありません◆グローバル化の逆流のような現象としての保護主義の台頭があるのは間
違いないとしても、自国で財政政策は行うことはできるものの、両輪であるはずの金融政策を自国で行
うことのできないEU加盟国の中にあっては、その矛盾が益々クローズアップされてくるでしょう。私
見にはなりますが、現代ではグローバル化の流れを止めることは事実上、不可能でしょう。しかしなが
ら、その中で各国の国益を優先するという考え方を否定することもできません。そのためにはどうした
らよいのか。産業革命期のような革命の時代の入り口のように思えてなりません。