I.「創業の成功要素」についての考察
前回は日本政策金融公庫が公表する「創業の手引」の中から「創業の成功要素」について取り上げまし
た。今回はこれらについて少し考えてみたいと思います。まず、「創業の成功要素」についておさらい
をすると、@優れたアイデアA事業に関する経験B幅広い人脈C綿密な情報収集D自己資金の5項目で
した。どの項目も公庫利用者のデータを集約したものですから、信頼性の高いものといえます◆まず、
@の優れたアイデアについてです。優れたアイデアが必要なのは間違いありませんが、そのアイデアを
顧客に伝える方法を考えておく必要があります。いくら優れていたとしても、それを伝えることができ
なければ、いわゆる「宝の持ち腐れ」になってしまう可能性があります◆次に、Aの事業に関する経験
についてです。いわゆる独立開業型に類型される創業の方法は成功率が高いものであることは間違いな
いでしょう。独立開業をするにあたって、従来の勤務先企業と同等の商品やサービスを継続して提供す
るのかどうかを明確にしておきます。独立開業するのですから、同等以上の商品やサービスの提供を考
えることと思いますが、そのためにはそれ相応の準備が必要です。焦りは禁物です◆さらに、Bの幅広
い人脈についてです。この項目は、将来にわたっての成長の可能性に大きくかかわってくる非常に大事
な項目です。多くの人の援助やお引き立てなくしてのビジネスは成り立ちません。従って、この援助や
お引き立てが大きければ大きいほど成長が期待できます。ただし、人脈は一朝一夕に広げることはでき
ません。地道に人脈を広げる努力が必要です。異業種交流会なども考えられますが、即座に成果を期待
するのではなく、先輩経営者の話を聞くという謙虚な姿勢も必要でしょう◆そして、Cの綿密な情報収
集についてです。情報といっても多岐にわたりますが、とりあえずは統計データの収集が必要です。し
かしながらデータは結局のところデータにすぎません。というのも収集したデータは過去の一定時点の
統計であり、今後どのように推移するかはわかりません。自分で現地へ出向き、見たり、聞いたりした
生きた情報が欠かせません。その上で統計データを見ると景色が変わって見えるはずです◆最後に、D
の自己資金についてです。自己資金が多いに越したことはありませんが、若干の注意が必要です。創業
後に思ったほどの売上や利益が上げられられない場合は、この自己資金の多寡が命運を分けることにも
なりかねません。逆に、予定以上に好調な滑り出しをした場合です。嬉しい悲鳴ともいえるわけですが、
こういった場合に資金繰りに窮するケースが良くあります。こういったときほど借入の検討を含め、綿
密な資金繰り計画が求められます。