II.配当所得について
住民税だけ申告不要選択可
平成29年度の税制改正では上場株式等の配当所得について「所得税」と「個人住民税」で異なる課税方
式が選択できることが明確化されます。
【上場株式等の配当の課税方法】
上場株式等の配当所得については@申告不要A総合課税B申告分離課税の3方式から選択することができ
ます。
@の申告不要制度は配当が支払われる時に20.315%(所得税+復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税
金が源泉徴収されて完了する制度で確定申告の必要はありません。この制度を選択した場合、配当は所
得税や住民税の計算の基となる合計所得金額や総所得金額には算入されません。
Aの総合課税を選択すると配当所得は合計所得課税に算入されますが、配当額の10%が所得税から控除さ
れる配当控除を受けることができます。
Bの申告分離課税を選択した場合、申告不要制度と同じく20.315%の税金が課せられますが、上場株式等
の譲渡損失と損益通算することができます。
【有利不利判定】
では、実際に配当を受け取った場合にどの方法を選択すればいいのか考えてみましょう。
〇最も簡単なのは?
もちろん@の申告不要制度です。配当が支払われるときに納税も終わっていますのであとから納税し
てくださいと言われることもありません。
〇最も納税額が少なくなるのは?
これは一概には言えないのです。
所得税で@ABの3通り、個人住民税でも3通りの課税方法が選べるので組み合わせとしては9通り
あります。(実際にはありえない組み合わせもありますが..)
基本的な考え方としては、所得税の税率が高い人は所得税は分離、住民税は申告不要を選ぶ方法が税
額が低くなります。
所得税の税率が低い人は所得税は総合課税を使って配当控除を受け、住民税は申告不要を使う方法が
税額が低くなります。
〇株式の譲渡損失がある場合
株式の譲渡損失がある場合には所得税も住民税も分離課税を選択して配当所得と譲渡損失を相殺する
方法が全体の税額が低くなる場合が多いと思います。
〇国民健康保険や後期高齢者の負担割合 配当所得を申告する場合には国民健康保険料の算定や後期高
齢者医療制度の負担率で不利になる場合があるので注意が必要です。
〇配偶者控除
所得税でも住民税でも配当について総合課税を選んだ場合、配偶者の合計所得金額が基準額を超えた
り、自身の合計所得が1000万円を超えて配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けられなくなる場合
があります。
【住民税の申告方法】
配当所得について所得税と異なる課税方法を選択する場合には所得税の確定申告書とは別に個人住民税
の申告書を提出する必要があります。
ただし、個人住民税の申告書の様式は自治体によってまちまちなので、各自治体に確認が必要です。
また、申告書の提出は住民税の納税通知書送達日までとなっていますが、行政側の手間等を考えると3
月中に提出した方がいいようです。
また、28年分についても多くの市長村でこの制度について対応可能ですが検討中のところもあるようで
すので、市町村に確認が必要です。