I.出来事の本質を考える
前号では、「時代の変化は常である」そして、その変化に柔軟に対応する」ことが、成功のカギの一つ
であることをお伝えしました。そのためには、創業当時の時代背景を知っておくことも必要であると申
し上げました。なぜならば、創業時に作成した「創業計画書」などと同様に、創業時の思いや目標とい
った原点に立ち戻ることができるからです。特に、昨年から今年にかけては、世界的にもイベントが多
く激動の数年間になるかもしれません◆昨年の大きな出来事といえば誰もが思い出すのが、英国のEU
離脱と米国の次期大統領の誕生だったのではないでしょうか。あいかわらず今年も、この二つについて
は全世界が注視していることであり、私たちも目を離すことができません。また、今年はフランスやド
イツでも重要な選挙が行われます。フランスでは、すでに現職のオランド大統領が退陣を表明しており、
選挙戦は混沌が予想されていますし、ドイツも同様です◆昨年の英国のEU離脱や米国大統領選でトラ
ンプ氏の勝利が報じられたとたん、為替相場が不安定になったことからもわかるように、経済は政治に
も非常に敏感です。もっとも、市場参加者たちは、事前の世論調査等がどうであれ、結果は事前予想に
かかわらずどちらか一つに決まっているわけですから、それに対する準備を怠ったりすることはありま
せん。すなわち、事前の予測を前提に行動しますが、もしそうでなかった場合の行動も同時に考えてい
ます。結果はわからないが、リスクはコントロールすることが可能だからです◆これら二つの出来事に
かかわらず、ヒステリックな見方をすれば、反グローバル化の動きといって良いのかどうかはわかりま
せんが、グローバル化により広がったとされる所得格差などの数々の問題を是正するという事象として、
その反動が欧米で起きていることは間違いないのかもしれません。肝要なのはそこに起こっている一つ
一つの本質がなんであるのかです◆メディアは、まれに極端な論調で報じることがあります。例えば、
欧州について報じられる場合「極右」という用語がよく用いられます。「極右」=「危険」と理解され
れば、言葉が独り歩きしてしまい、その政策の本質が見過ごされてしまう可能性があります。本質をき
ちんと理解しようとしたのであれば、その結果がどうであったのかは関係ないはずです。創業時の時代
背景がどんなものであったにせよ、それをどう考え、どう行動したのかが大事なのです。検証は歴史家
に任せておけばよいのですから。