II.タワマン節税は有効か
平成27年の相続税の改正でにわかに脚光をあびたタワーマンションを利用した節税ですが、今後は
リスクを伴う可能性が高まりそうです。
【タワマン節税とは】
相続税は相続財産全体の評価額に税率をかけて計算します。
たとえば現金で1億円を持っていたとすると、そのままの1億円が相続税の評価額となります。
一方この1億円でタワーマンションを買ったとしましょう。
タワーマンションの評価額は土地の評価額と建物の評価額の合計額となります。
相続税の実務では土地は路線価で評価し、建物は固定資産税評価額で評価します。路線価は時価の約
80%、固定資産税評価額は時価の50%くらいなので現金で持ってるより相続税評価額が低くなりま
す。
これは一戸建てでも同じことになりますが、タワマンはさらに時価と評価額の差が大きくなります。
それはタワーマンションは1戸あたりの土地の持ち分が小さくなり、その分時価に占める建物の割合が
大きいので、それだけ評価が下がるのです。
タワマンの高層階では、この差がさらに大きくなります。タワマンの場合、高層階ほど時価は高くな
りますが、固定資産税評価額は占有面積が同じであれば高層階でも低層階でも同じ評価になるからです。
この結果1億円で買ったマンションが相続税の評価額では3000万円などということがおこるので
す。
【タワマン節税の現状】
タワマン節税は以前から富裕層を中心に行われていましたが、平成27年に相続税が増税されてから、
あらためてその手法に脚光があたりました。
ローンを使って賃貸マンションを建てるよりも手軽であるし空き部屋等のリスクも少ない、人気のタ
ワマンであれば相続開始後売却すれば、取得価格より値上がりしているケースさえ考えられるのです。
父親が1億円でタワマンを購入し、子供に3000万円の評価額で相続させる。子供は相続開始後そ
れを1億円で売却すれば諸手数料は必要だが相続税を1千万単位で節税することが可能なのです。
【タワマン節税の今後】
このような、節税手法については当然リスクもあります。
相続の直前にタワマンを購入し、相続開始1年以内に売却した例では税務署がそれを否認し、国税不
服審判所でも納税者側が負けました。この例の相続人らは節税のためだけにタワーマンションを購入し、
1度も入居することなく売却したことが行き過ぎた節税対策と見なされました。また、政府・与党は平
成29年度税制改正で、タワーマンションなどの高層マンションにかかる固定資産税を見直す予定です。
新築のタワマンについては実際の取引価格を踏まえて高層階ほど固定資産税の税負担を高く、低層階で
は低くなるよう調整する予定です。
タワマン節税に限らず行き過ぎた節税には、リスクが伴うことを知った上で、相続税対策には専門家
と長期的な計画をたてることが大事です。