I.時代の変化に柔軟な対応を
今回は「創業」というテーマを一休みしたいと思います。というのも、この原稿を書いている時間帯に、
日本銀行の金融政策決定会合の結果が発表される予定だからです。とはいえその結果自体に特別な理由
はありませんし、今回の決定について個人的な興味が特にあるわけでもありません。◆しかしながら、
近年これほど日本銀行の動向が注目されたことはありませんでした。デフレからの脱却を目指す我が国
ですが、なかなかその道筋が見えてきません。首相は国会では「もはや日本はデフレではない」といっ
た答弁を繰り返していますが、物価に関する統計を見る限りでは何とも言えないというのが実感です◆
先般行われた日本銀行の総括では「イールドカーブコントロール」という用語が登場しました。これに
ついて翌日の新聞各紙は、「量から金利へ」という報道をほぼ各社がしていたように記憶しています。
「イールドカーブコントロール」というカタカナを聞いて即座にその意味が理解できできる人は私も含
め、ほとんどいないでしょう。それを言い換えて報じたのがメディアだったのでしょう◆ここで、日本
銀行の金融政策の是非について論じるつもりは全くありません。気になるのは、最近やたらと金融関係
を中心にカタカナを用いた用語が増えていることです。特に金融庁のホームページにはこういった用語
が満載です。枚挙にいとまがありませんから個別に取り上げはしませんが、意味を理解するのにはかな
りの困難を伴います。ホームページの役割を考えるのであれば国民に向けたメッセージであるはずです
が、用語の意味がわからずせっかくのメッセージも伝わって来ません◆金融庁関係者の説明によれば、
それぞれのマーケットにおける外国人関係者の増加とその用語自体の意味を日本語では意味を正確に表
すことができなくなってきていることが主な理由だそうです。企業経営などに新しい考え方や概念がど
んどん持ち込まれれば確かにそれは難しいことなのでしょう。以前は、カタカナは便利な日本語だと思
っていた概念こそが吹き飛んでしまいそうです◆とはいえ、こういった用語を全く無視するわけにもい
きません。中には今後死語となるものもあるのかもしれませんが、根気よく忍耐強く付き合っていく必
要がありそうです。創業時の時代背景を知っておくことは重要ですが、時代の変化は常です。柔軟な対
応が成功のカギを握っているかもしれません。