I.創業の想いを伝える計画書
前回は、日本政策金融公庫発行の「創業の手引」に基づいた事業計画書作成の手順について触れました。
今回は、その手順について、もう少し掘り下げたいと思います。おさらいをすると、「全体の構想、事
業イメージ」⇒「具体的な内容」⇒「創業時の資金計画」⇒「収支計画」という手順でした◆まず、「
全体の構想、事業イメージ」については、手引では「創業動機、事業の目的、将来的なビジョン」と「
市場調査」の二つの項目が挙げられています。創業の動機は創業の想いを読み手に伝えることです。ま
た、創業する事業の経験が豊富にあれば、事業の成功確率を高めることが可能です。この手引ではそれ
ぞれについてのチェック項目がありますから、ぜひ活用することをお勧めします◆「市場調査」を創業
時に考えないということはありえないかと思いますが、これから始める事業の市場規模、将来性、事業
を取り巻く環境等を調査することにより、事業内容の裏付けとすることができます。例えば、今後の市
場規模の拡大が確実であると見込まれる事業であっても、そのような事業には多くの企業が新規参入を
計画しているなど、競合が激しくなることが予想されることに注意が必要です◆「具体的な事業内容」
では、提供する商品、サービス等やそれらの提供方法にどのような特徴があり、それが顧客のニーズに
マッチしたものであるかを説明します。特に、商品・サービスの内容については「よくあるケース」と
「修正例」が手引に示されており、他の事業者との差別化を図るうえで非常に参考になります。同じよ
うな商品やサービスを提供する競合が多くなっている現在では、セールスポイントをブラッシュアップ
する作業は欠かせません◆さらに、「具体的な事業内容」では、「販売計画」や「仕入計画」も重要な
項目です。「販売計画」は経営戦略の重要な項目であり、綿密な検討が必要です。「仕入計画」は売上
や利益にも直接影響する大切な項目です。そして、「資金計画」や「収支計画」についても当然ながら
影響を与えます。この二つについては、次回以降でもう少し詳しく取り上げたいと思います◆創業時に
最も気になるのが、創業しようと思っている事業の創業資金と創業後の収支だと思います。資金の確保
ができなければ、創業自体ができませんし、創業後も赤字が続けば事業の中断や廃止を余儀なくされる
わけですから当然といえばそれまでかもしれません。「資金計画」と「収支計画」についても次号以降
でもう少し詳しく取り上げたいと思いますが、その前提はあくまでも、「全体の構想、事業イメージ」
や「具体的な事業内容」です。