I.「会計基準」というルール
今回は「財務諸表」作成のための基準となる「会計基準」について簡単に触れておきたいと思います。
「財務諸表」の原型が出来上がるまでの流れについては前回取り上げました。何度も申しあげていると
おり経営者の仕事は「財務諸表」を作成することではなく、読んで使うことです。そのためには、「会
計基準」というルールを理解しておくことが大切になってくるのです。ここまでで、なんだか難解そう
だなと思われるかもしれませんが、ごく常識的なことなので心配はご無用です◆中小企業にあっては、
「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」が公表されています。いずれ
においても勘定科目等についてその確認事項が会計処理の基準として記載されています。ここでは、中
小企業庁から公表されている「中小企業の会計に関する基本要領」に基づいてその具体的な内容を見て
いくことにします◆まず、売掛金については、法的に消滅したり回収不能なものがある場合には、貸倒
損失として処理します。また、回収不能の恐れがある場合、その回収不能見込額を貸倒引当金として計
上します。さらに、商品等の棚卸資産については、時価が取得価額よりも著しく下落した場合、回復の
見込みがあると判断されたときを除き、評価損を計上します。つまり、売掛金の中には通常に回収でき
るものだけが計上されることになり、棚卸資産は原則として取得価額で計上するものの陳腐化等で10
0の価額で取得したものが決算時には30の価額しかなければ30という価額で計上することになりま
す◆次に固定資産については、有形固定資産は、定率法、定額法等の方法に従い、無形固定資産は、原
則として定額法により相当の減価償却を行わなければなりません。相当の減価償却とは、耐用年数にわ
たって、毎期、規則的に減価償却を行うことです。ある期は定率法、ある期は定額法といったように償
却の方法を恣意的に変更することは原則としてできません◆「中小企業の会計に関する基本要領」の一
部について見てきましたが、どれも当たり前のことです。こういった「会計基準」というルールにのっ
とった「財務諸表」は正確に企業の状態を数字で現したものにほかなりません。「財務諸表」に表示さ
れた数字が正しくなかったとしたら、経営者としての判断を誤ることにもなりかねません。この「財務
諸表」を使いこなすのは、経営者の腕の見せ所の一つでもあります。