V.赤のポロシャツ

「ショウ」と「ジミー」、そして僕はなぜかいつも3人組で行動していたようだ。 ずいぶん彼らと酒も飲んだりした気がするが、どちらかの一人と二人きりで飲んだというのはほとんど 記憶にないから、きっといつも3人で飲んでいたのだろう。もし、3人のうち誰か一人が麻雀好きであ ったなら、もう一人メンツを探さなければならないという苦労があったのだろうが、幸運なことにそん なことは一度もなかった。 1981年の夏、北陸方面へと向かった。 車での旅行だったのだが、僕たち3人組は金沢に残ったもののそれぞれが別行動になってしまった。 要するに協調性がないということなのかも知れないけれども、宿泊場所と夜の食事だけは一緒だったわ けだから何が何だかよくわからない。 そして、高速道で帰路へと向かった。その高速道で僕たち3人が乗った車のタイヤがバーストしてしま う。その時ハンドルを握っていたのは、「ショウ」。見事なハンドルさばきで車を路肩へと停車させた のである。彼以外の人間がハンドルを握っていたなら大変な事故になっていたかもしれないと思うと今 でもゾッとする。 たまたま赤いポロシャツを着ていた「ジミー」はおもむろにそのシャツを脱いで上半身裸のままで非常 灯代わりに路肩で必死に振っていたのを今でも鮮明に覚えている。 とっさのことで、非常灯の確認すらできなかったのだ。 すると、その時、突然車中からクリストファー・クロスの楽曲が流れてきた。 僕たち3人がホッとした瞬間であった。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)