I.「財務諸表」の作成方法
前号まで「財務諸表」について触れてきました。具体的な数字を示してご説明できませんでしたから、
あまりピンとこなかったかもしれません。ただ、「財務諸表」がどんなものであり、どのように重要な
のかがなんとなくご理解いただければ経営者としてはそれで充分です。経営者としての実務の中で「財
務諸表」の存在さえわかっていれば、あとはその読み方と使い方をマスターするだけです◆今回はこの
「財務諸表」が出来上がるまでの作業(仕組み)について簡単に触れておきたいと思います。この一連
の作業については簿記というスキルを使用します。従って、「こんなものか」という程度で軽く読み進
めてください。以前申し上げた通り、決して簿記のスキルを身に着けようと簿記の勉強を始めたりはし
ないでください。経営者の仕事は「財務諸表」を作成することではなく、使いこなすことです◆まず、
日々の取引を複式簿記のルールによって仕訳します。例えば、現金で商品を売り上げた場合は、現金○
○円/売上○○円というように、左と右に勘定科目という見出しのようなものと、日付・金額・摘要等
を記録します。こうして出来上がるのが、「仕訳日記帳」となります◆次に、この「仕訳日記帳」から
各勘定科目ごとに必要事項の転記を行っていき、一定期間ごとの集計を行います。こうして出来上がる
のが「総勘定元帳」です。「総勘定元帳」には、取引の日付・金額・摘要等が網羅されることになりま
す◆さらに、「総勘定元帳」の各勘定科目を勘定科目ごと、一定期間ごとに集計した金額から「合計残
高試算表」を作成します。そしてこの「合計残高試算表」から「貸借対照表」や「損益計算書」を作成
するという手順になります。まとめると、「仕訳日記帳」の作成⇒「総勘定元帳」の作成⇒「合計残高
試算表」の作成⇒「財務諸表」というのが大雑把な流れです◆簿記のルールに従えばとりあえずは「財
務諸表」の原型は出来上がります。ただし、これで完成というわけにはいきません。なぜなら「財務諸
表」の完成には「会計基準」というルールに適合しているかどうかの問題があるからです。次回は、こ
のルールについて触れたいと思います。