I.キャッシュフロー計算書
今回は「財務諸表」のうち、「キャッシュフロー計算書」について取り上げたいと思います。まず最初
に取り上げる理由は、経営者から「利益は出ているのにお金がない」といった質問をよく受けることが
あるからです。極論になりますが、会社がどんなに利益を出していても、資金が枯渇してしまえば会社
は倒産します。いわゆる「黒字倒産」と呼ばれるものです◆中小企業の場合、会社のお金が不足すると
オーナー社長が個人のお金を会社への貸付という形で補填したり、あるいは金融機関等からの借入の際
には連帯保証人になるといったことがほとんどです。こういったケースでは、会社の倒産は社長の破産
へとつながってしまいます。つまり、会社を経営するうえで、資金管理の重要性は非常に高いと言えま
す◆会計上で計算される利益は、一定期間の損益を正しく表示するという期間損益計算の考え方から、
実際のお金の動きとは必ずしも一致しません。例えば、入金がなくても売上計上したり、支払がなくて
も費用として計上しなくてはならないのです。そのため、会計上は利益が計上されていても、その裏付
けとなるお金が会社にあるとは限りません。そこで、過去における一定期間のお金の動きを表すのに「
キャッシュフロー計算書」が必要になってくるわけです◆「キャッシュフロー計算書」には、「営業活
動キャッシュフロー」・「投資活動キャッシュフロー」・「財務活動キャッシュフロー」の3区分があ
ります。そのため、どの活動で資金を生み出し、どの活動で資金を減らしたのかが一目瞭然で理解でき
るのです。すなわち、どのような活動の結果として決算期末の現預金があるのかがわかります◆それぞ
れの区分に表示されている項目を詳しく見てみると、どうすれば資金が増え、その反対に資金が減るの
かがわかります。例えば、営業活動で在庫や売掛金が増加していれば資金は減ります。また、投資活動
で営業活動と財務活動で生み出したキャッシュを超える設備投資を行った場合も資金は減ります。結果
として表示される結論は、いたって単純なことであることが多いのです◆さらに、将来の資金の増減を
管理するためには、「資金繰り表」の作成が必要となります。将来の資金不足を未然に防止するために
は欠かせないものです。いざとなって「お金がない」といったことにならないように、早めの対策こそ
が健全な経営を継続するためには大事です。