IV.指揮官たちの見事な手腕

個人的な感想ではあるが、正月の箱根駅伝を皮切りにスポーツ界で指揮官たちの存在がこれほど際立っ た年は珍しい。 まず、プロ野球界ではセ・パ両リーグとも就任一年目の監督が指揮を執る球団が優勝した。 セリーグではヤクルトの真中満監督、パリーグではソフトバンクの工藤公康監督のお二人だ。 真中監督が監督就任の際に唯一こだわったのは、三木肇コーチを参謀に据えることだった。 野球観が一致するというのがその理由だそうだ。同氏に加え、打者に関しては杉村コーチ、投手に関し ては高津コーチがその手腕をいかんなく発揮した。 選手たちとの距離感を絶妙に保ち、その選手たちの自主性を育て、二年連続最下位だったチームを優勝 へと導いた手腕は見事であった。 一方の工藤監督は前年日本一の球団を指揮するという点では荷が重かったことに加え、そこに独自色を 打ち出すことにはかなり勇気がいったに違いない。その一つが練習メニューの変更であり、その二は4 番に内川選手をシーズンを通して据えたことだった。圧倒的な成績での優勝には脱帽だ。 そして、今年はなんといってもラグビー界に触れないわけにはいかないだろう。 大学ラグビー界では、現在大学選手権6連覇中の帝京大の岩出監督の名前がすぐ思い浮かぶが、それ以 前にも早大の清宮氏、関東学院大の春口氏などが記憶に残る。もっとも、学生ということを考えれば指 揮官と呼ぶよりは指導者の呼称がふさわしいと思うのではあるが。 とはいえ、やはり極め付きはエディー・ジョーンズ氏に尽きるだろう。ラグビーW杯は、サッカーW杯、 五輪に次ぐ大きな大会といわれている。今大会の結果は19年に日本で開催される同大会につながる十 分すぎるほどの内容であった。名将と呼ばれる同氏の力は日本ラグビー界に大きな変革を与えてくれた といっても過言ではないだろう。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)