I.経営者の会計知識
今回からは、起業後に経営者として最低限押さえておきたい会計知識やその隣接分野について触れてい
きます。まず申し上げておきたいのは、「会社経営者は、会計や財務の知識は完璧でなければならない」
と思っているのであれば、それは大きな間違いです。よく会社設立にあたり、会計に関する書籍を読み
あさったり、簿記の勉強を始めたりする光景を目にしますが、それこそ時間の無駄です◆最低限の知識
は必要とはいえ、経営者のなすべきことは他にたくさんあります。売上を上げることや顧客満足、会社
の将来へわたっての戦略策定など挙げればきりがありません。「会社が現在どのような状況にあり、今
後どのようなことが予測されるのかを、数字=お金で把握」できればまったく問題ないのです。書類作
成を自分自身で行う必要はなく、専門家に任せ、その結果の説明を受け、自分の知りたい情報について
質問すればよいのです◆とはいえ、起業したばかりの経営者にとっては、説明を聞いてもチンプンカン
プン、さらに何を質問したらよいのかもわからないという不安もあるでしょう。しかし、そんな不安は
杞憂です。具体的には財務諸表や試算表といった書類に落とし込んでいくことになるわけですが、自分
の経営する会社ですからその事業内容については熟知しているはずです。月次で説明を受けるごとに書
類の内容についての理解もより深くなっていきます。他社の書類を見るとなればそれ以上の知識が必要
となるかもしれませんが、そのような場合でも専門家の説明があれば理解できるようになっているはず
です◆経営者の仕事は、財務諸表や試算表などを使い、経営のかじ取りをしていくことにあります。書
類作成は外注できても、経営者の仕事を外注することはできません。書籍には「会社を経営するには簿
記くらい知っていなければならない」なんてことが書いてあったりします。ここでいう簿記とは、簿記
という手法によってできあがった財務諸表なり試算表を活用できるかどうかということです。決して、
簿記をマスターするために日商簿記3級の勉強から始めなさいということではありません。しっかりと、
経営者としての仕事で力を発揮していただきたいと思います。次号へ続きます。