II.損益分岐点分析の手法
前号の「損益分岐点分析」についてもう少し掘り下げます。まず、売上高と利益の関係です。利益は売
上高から変動費と固定費の合計を差引いたものとなります。次に、売上高から変動費を差引いたものを
限界利益といいます。従って、利益は限界利益から固定費を差引いたものとなります。そして、この限
界利益を売上高で割ったものを限界利益率といいます。◆前号では、売上高320万円・変動費240
万円・固定費80万円と仮定しました。この数字に基づいて計算してみます。利益は売上高320万円
から変動費240万円と固定費80万円の合計320万円を差引いたものですから、0円となります。
利益が0円ですから損益がトントンとなり、この売上高320万円が損益分岐点の売上でした◆次に限
界利益率を計算します。売上高320万円から変動費240万円を差引いた80万円が限界利益となり
ます。そして、この80万円を320万円で割った25%が限界利益率となります。利益は、限界利益
が80万円ですから、ここから固定費80万円を差引いた0円となります◆損益分岐点は利益が0円の
時の売上高ですから、限界利益=固定費の場合となります。従って、損益分岐点の売上高は固定費を限
界利益率で割ったもので計算できます。実際に計算してみます。今回の例では、固定費80万円・限界
利益率25%ですから80万円÷25%=320万円となります◆では、目標利益が20万円の場合の
売上高はいくらになるでしょうか?計算してみます。この利益20万円を限界利益率25%で割ると8
0万円です。この80万円を損益分岐点売上である320万円に加算すると400万円になります。検
算します。売上高400万円に限界利益率25%をかけると100万円です。この限界利益100万円
から固定費80万円を差引くと利益が20万円となります◆この分析手法を用いることによって収益改
善の方向性が見えてきますが、その大きな柱は、損益分岐点を下げることです。その方法は計算過程か
ら明らかなように、固定費を下げる、限界利益率を上げることが有効です。固定費を下げるためには過
剰な設備を持たないことや労働生産性の向上などが挙げられます。また、限界利益率を上げるためには
仕入コストの削減や流通コストの見直しなどが挙げられます◆この分析手法は比較的簡便ですから、創
業計画を作成する際はもちろん、創業後の収益改善のために何をすれば良いかが見えてきます。ぜひ一
度分析してみることをお勧めします。