V.背番号は86

8月6日。広島のマツダスタジアムでピースナイターと銘うたれたプロ野球公式戦が開催された。この 日のユニフォームは、監督・コーチ・選手全員が胸に「PEACE」の文字。背中には選手名の代わり に「HIROSHIMA」と記され、背番号は86に統一され、そして帽子には平和のシンボルである ハトがあしらわれた。また、いわゆる鳴り物入りの応援も禁止され、「特別な日の特別な試合」という おぜん立ては出来上がった。 8月6日といえば70年前にこの地に原爆が投下された日。最近広島で行われた調査によれば、被爆地 広島でさえ原爆の投下日時を知らない子供たちが増えたという衝撃の結果が出たそうだ。 これとは全く逆なのが、米国の意識だ。広島・長崎への原爆投下の正当性を尋ねたところ、特に若い世 代では「間違いだった」とする意見が年々多くなってきたことが報じられている。 広島・長崎へ投下された原爆の開発者が、最近、あるインビューでこう答えていた。「日米ともこれ以 上の戦死者を生まなかったことに周囲からは大きな賞賛を受けていたし、自分自身もそう信じていた。 しかし、広島・長崎を訪れて考えが変わった。私は、大きな過ちを犯したのだ」と。 「核兵器は絶対悪」と断じる広島市長。しかし、残念ながらその絶対悪であるはずの「米国の核」に依 存するのが我が国の現実だ。その現実がありながらも「唯一の被爆国」という訴えだけで国際社会に働 きかけるのも限界かもしれない。 現在、国会では安保法制が審議中だ。「日本だからこそできる」あるいは「日本にしかできない」そん な安保体制を構築する契機になればと思う。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)