I.企業体質を強くする
日本政策金融公庫総合研究所の調べによれば、開業後1年以内の企業の約7割が、開業時に目標として
いた月商を下回ったという結果が出ているようです。また、日本政策金融公庫が開業後1年を経過した
企業にたずねたところ、約6割の企業が予想売上=売上目標を達成できていないというデータもあるよ
うです。しかしながら、起業あるいは独立開業の際に立てた売上目標がたとえ未達であったとしても決
して悲観する必要はありません◆同研究所は目標とする月商を下回った原因の一つとして不十分な市場
調査を挙げています。もちろん、事業における誤った意思決定を行わないために重要な事項であるのは
間違いありません。しかし、それ以上に問題なのは、期中でその目標をあきらめてしまうことです。開
業初年度から売上目標を上回ることの方が少数です。もちろん、結果的にはやむを得ないかもしれませ
んが、問題はそこへ至る過程です。大切なのは、その原因を把握してその対策を実行することにありま
す。つまり、うまくいかなかった原因を把握してその対策を立て、次へ生かすという循環を構築すると
いうことです。その繰り返しが企業の体質を強くします◆開業後の実態について見てきましたが、事前
準備についても触れておきたいと思います。事業計画書の重要性についてはもちろんですが、それ以外
にも考えておく事柄があります。まず、自分の過去を振り返りキャリアや能力、人脈など自分の強みと
弱みを整理すること、すなわち自分自身を把握することが大切です。強みは生かせばよいのですし、弱
みは補うことができます。また、市場調査に関連しますが、起業したい業界の動向や顧客情報を知るこ
とです。ここでは、市場規模の大きさや収益性の見込みなどを把握します。特に経験のない事業を始め
ようと思っている場合はこれらの情報収集は欠かせません◆起業あるいは独立開業はしたいが、失敗も
したくないと思われる方も多いかと思います。失敗しないビジネスとは事業として継続することのでき
るビジネスと言い換えることができます。その条件としては、初期投資の小さいビジネス・利益率が高
いビジネス・在庫リスクの少ないビジネス・顧客が固定化しやすいビジネスなどが挙げられます。これ
らについては、そもそもリスクの小さいビジネスですからリスク自体のコントロールの必要性も限定さ
れてきます。次回では、目標利益の確保のために必要な売上高を把握するための手法としての「損益分
岐点分析」についてです。