I.「想定外」を「想定内」に変える
起業あるいは独立開業に際してよくいただくご相談に「自己資金」に関連するものがあります。「どれ
くらい自己資金はあればよいのか」とか、「自己資金が少ないけれども起業・独立開業は可能なのか」
といった内容です。事業の内容によって金額の多寡については一概には言えませんが、自己資金という
要素が重要なものの一つであることは間違いありません◆第一の理由として、自己資金の作り方を通し
て、事業開始に向けての準備をどれだけ計画的に行ってきたかがわかります。この計画性は目標の達成
に向けて取り組む姿勢として経営者に欠くことのできない重要な資質でもあります。開始時の資金をす
べて自己資金で賄うことができればそれで良いかといえば、そうではありません。というのも、事業を
継続していく中で借入の必要性も考えておかなければならないからです◆第二の理由として、資金繰り
のリスク軽減につながることです。自己資金が多ければ借入を最小限に止めて、月々の返済額を抑える
ことができます。あるいは、自己資金の一部をプールしておけば想定外の支出があったとしても乗り切
れる可能性が高くなります◆前段で「想定外の支出」という言葉が出てきましたので、こちらについて
も少し触れておきます。日本政策金融公庫の調査によれば、約半数の創業者が「創業前には知らなかっ
た支出がある」と回答しています。その中身は、「源泉徴収した所得税」「健康保険料の事業主負担」
「厚生年金の事業主負担」「機械にかかる固定資産税」などの税金や社会保険料となっています◆確か
にこれらの税金や社会保険料の支払いなどは期限が来て初めてその存在に気づかされることが少なくな
いようです。というのも、日々の営業活動に直結する支出ではないため「うっかり」ということになっ
てしまうのかもしれません◆資金繰り予定表の作成をお勧めしたことがありますが、この予定表を作成
することによって想定外の支出は、「想定外」ではなく「想定内」の支出に変えることができます。特
に、税金などの支出は期限が予め決まっていますから、それほど難しい作業にもなりません。