V.世紀の一戦と場外乱闘

先日、車中で偶然、石川さゆりさんの「天城越え」という曲を耳にしました。かつて、メジャーリーグ プロレス界では絶大な人気と名声を博した私ではあるが、今回はプロボクシング界の「世紀の一戦」と 銘打たれたメイウェザー選手とパッキャオ選手との対戦に大きな関心を寄せた一人であった。 試合前は、両者が手にする莫大なファイトマネーとそのマネーを生む源泉に始まり、両者の生い立ちか ら現況までもがメディアで多く報じられた。その対照的な姿は、世紀の一戦を戦前からさらに盛り上げ るものでもあった。 かつて、プロボクシング界で同様に「世紀の一戦」と銘打たれたものでは、フレイジャー対アリ戦やハ ーンズ対レナード戦などが印象に残っている。個人的には、「世紀の一戦」と銘打たれはしたものの試 合後に若干の物足りなさを覚えたのも事実だ。しかし、その時代を代表するボクサーが互いに相手の長 所を殺すという闘いになるわけだから、派手な闘いを期待するよりは、互いの卓越したテクニックを見 るというのが楽しい観戦方法だったのであろう。 さて、今回の一戦に戻るが、両選手ともハッキリ言ってすでに峠は過ぎた選手。どちらかといえば、 「興行」という意味合いの方が強かったような気がした。さらに、試合後に「訴訟騒ぎ」という場外乱 闘?が始まってしまった。私は、決して場外乱闘は好まなかった。もっとも、リング下の選手にフライ ングアタックを仕掛けたことは何度もあったのではあるけれど。 とはいえ、リング内での一戦は両者の持ち味が披露されていたなかなかの一戦であったと思う。結果的 には、戦前の予想にたがわずメイウェザー選手のアウトボクシングがさえた試合であった。 場外乱闘さえなければ、それを私は好まない。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)