II.相続対策(その2)暦年贈与をしよう
相続対策は実際に相続が始まる前に行うことが重要です。
生前贈与は相続が開始する前に財産を圧縮する効果があります。生前贈与には年に110万円の非課税
枠を使って行う暦年贈与と、住宅や教育資金等の特別な使途のための贈与を受けた場合の特例制度を使
う場合があります。
まず、暦年贈与について考えてみましょう。
【暦年贈与に生前贈与】
相続税の税率より低い税率の範囲で贈与を行うことによってトータルの税金を減らす効果があります。
いくつかの例で考えてみましょう。
【例1】
(前提条件)
相続財産2億円
法定相続人 配偶者 子供一人 の二人
その他に孫1人
@生前贈与をしない場合の相続税額
この場合、各種の軽減制度を全く考慮しないと相続税は3340万円になります。
A孫に110万円を贈与した場合の税額の計算
贈与税の額 0円
相続税の額 3307万円
合計税額 3307万円
B差引き @―A=33万円の税額軽減
孫に110万円を贈与することにより33万円の税が軽減されます。
これを毎年10年間行ったとすると、合計で330万円の税の軽減になります。
【例2】
(前提条件) 例1に同じ
@例1に同じ
A孫に500万円を贈与した場合の税額の計算 贈与税の額 53万円
相続税の額 3190万円
合計 3243万円
B差引き @―A=97万円の税額軽減
孫に500万円を贈与することにより97万円の税が軽減されます。
これを毎年10年間行ったとすると、合計で
970万円の税の軽減になります。
例1、例2でわかるように無税の範囲で贈与を行った場合より贈与税を払わなくてはならない金額を
贈与した方が有利な場合もありますので、効果的な贈与の仕方を考える必要があります。
注意点
@名義預金
単に名義が孫などになっているだけで、贈与の実態が伴っていない場合は贈与とみなされず相続財産
に加算されます。
A3年以内の贈与財産の加算
相続などにより財産を取得した人が、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときには、その
人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算します。
上記の例の場合、孫が相続により財産を取得した場合には加算されますが、相続により財産を取得し
ない場合には加算されません。
B一括贈与
前もって「1000万円を年100万円ずつに分け、10年かけて贈与する」などと契約すると、税務署から、
最初の年に一括で贈与したのと実質的に同じだと判断され高い贈与税が課せられる可能性があります。
贈与は1年ごとにお互いの意思を確認した契約書を作るなどして行うことが重要です。