I.道しるべとしての「事業計画書」
今回は前号で積み残した「経営プラン」「リスクと解決策」「資金計画」についてです。前々号で、
「起業や独立開業の目的や動機は何でも構わないと思いますが、最も大事なのはその仕事をどうやって
継続していくかであり、そのためには事業計画書の作成が欠かせない」と申し上げました。今回触れる
3項目は前回触れた5項目を具体的に実行・実現していくために策定するものです◆まず、「経営プラ
ン」とは事業を継続的に運営するためのシステムや仕組み作りです。その内容は、仕入れ計画や開発・
生産計画、人員・組織計画など多岐にわたります。人員・組織計画については、起業当初は十分な体制
を構築することは困難です。一人何役もこなさなければならないということはむしろ当たり前のことで
す。しかしながら、先を見越した計画がなければ事業継続が難しくなるケースもあります。例えば、当
初計画を超える受注があった時などはうれしい悲鳴なのですが対応がままならず、せっかくのチャンス
をみすみす逃してしまうことにもなりかねません◆次に「リスクと解決策」についてです。想定される
リスクや問題点を抽出して危険度を分析するとともにその対処方法や解決策を考えておく必要がありま
す。想定されるリスクは数限りないものかもしれませんが、類型化すればかなりの部分をカバーするこ
とはできます。例えば、外部要因と内部要因に分類し、それぞれのリスクを掘り下げていくという方法
です。それらのリスクが発生したときの対処方法なり、その解決策が重要であることは言うまでもない
ことです。しかしながら、その中には解決困難なものもあるはずです。ただ、それを事前にきちんと把
握しているかどうかがさらに重要なのです◆最後に「資金計画」についてです。収支予測に加え、資金
繰り計画を立案します。また、資金の調達方法や返済・配当計画も必要です。あまりにも当然なことな
のですが、資金がなくては事業計画自体が成立しません。ここまでの7項目を計画・検討する中で、こ
の資金計画はほぼ固まってきているはずです。資金調達の方法など具体的な部分は相手もあることであ
り、難しいかもしれませんがとりあえず計画は計画として作成することはできるはずです◆これでとり
あえずの「事業計画書」は出来上がりました。次は、この計画書をチェックし、完成させる作業へと移
ります。完成とはいっても、事業を継続していくうえで多くの修正が必要になります。ここまではあく
までもスタート前の段階にすぎません。最初から完璧なものである必要はありません。むしろ、完璧な
ものであればその方が再検討の必要が大であるともいえるかもしれません。大事なことは、事業計画書
を作成する過程で様々なことが具体的かつ明確になったことです。計画はあくまでも計画です。今後、
仕事を継続するうえでの道しるべになることは間違いありません。