V.スター誕生

ずっと気になっていた女性がいました。女性というよりも少女といった方が適切なのかもしれません。 その少女との出会いは、彼女が小学生の低学年の頃です。ただ、その少女から伝わってくる気迫や雰囲 気には何ともいえないオーラがあり、周囲の大人たちのすべてを釘付けにしたと記憶しています。 それから何年かが過ぎ、ある日の新聞紙面を見た私は、「やっぱり」なのか「さすが」なのかよくわか りませんが、成長した彼女の写真の姿を見て感激してしまいました。 もちろん私だけでなく多くのファンが同じ思いだったはずです。 その少女とは囲碁棋士の藤沢里菜二段です。15歳9カ月の彼女は、女流棋戦とはいえ史上最年少で優 勝するという快挙を成し遂げたのでした。 藤沢二段は、小学5年生のときに日本棋院の女性枠の採用試験で合格し、11歳6カ月でプロとしてデ ビューしました。これまた、史上最年少プロの誕生でもありました。 囲碁棋士のプロになるためには、一般枠のほかに藤沢二段のように女性枠も設けられています。 彼女は一般枠でも早晩プロになることはできたでしょう。しかし、あえて女性枠により一日でも早くプ ロ資格を取得し、プロとしての実戦に臨みたかったというのが本音ではないでしょうか。 藤沢二段は女性固有の制度をうまく活用してもぎ取ったものであると推測します。これから、男性棋士 との対戦も増えてくることでしょう。 バッタバッタと男性棋士を負かす姿も目に浮かびます。女流棋戦だけではなく、一般棋戦でのタイトル 獲得をぜひ目指してほしいものです。 実現すれば、史上初の大快挙なのですから。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)