II.相続税が身近な存在に
ブリュッセルで開催されたG7では、ロシア並びに中国への対応をめぐって各国首脳の本音と建前が交
錯する結果となったようです。ロシアについてはウクライナ情勢、また中国については海洋進出問題に
ついて、各国とも強い非難声明を出さなければならないというのが建前です。しかし、欧州はロシアか
らの天然ガスの安定供給の期待があり、クリミア編入についてはやむを得ないというのが本音のようで
すし、中国についても経済的な結びつきが強く、強い声明は出せないというのが本音のようです。我が
国もロシアに対しては北方領土問題の解決のためには同国との関係悪化は避けたいというのが本音だっ
たでしょう◆この報道と同じころ、欧州中央銀行=ECBがマイナス金利の導入を決定したことが伝え
られました。その効果については今後を注視しなければわかりませんが、インフレ率が低下しさらには
デフレ懸念さえあるとのことでこの決定になったことが報じられています。「デフレ先進国?」である
日本は、昨年4月にデフレ脱却に向けて本格的に始動し、現在その途上にあります。欧州債務危機が何
とか落ち着いたと思ったものの、まだまだ欧州経済は予断を許さないようです◆さて、最近何かと目に
するのが「相続税」という三文字です。その大きな理由は、来年から相続税の増税が決定していること
です。では、相続税の税収は年間いくらぐらいあるのでしょうか?財務省の資料によれば、平成24年
度の税収は約1.5兆円(贈与税を含みます)となっています。国の試算によれば、今回の増税によっ
て3千億円程度の税収増を見込んでいるようです。この金額が大きいのか小さいのかはよくわかりませ
んが、財政健全化に資するにはあまりに規模が小さすぎます。いずれにせよ、国民の財産が税金という
形で国に移転することだけは間違いありません◆ここからは個人的な意見です。まず、金額の多寡にか
かわらず国民の財産が国に移転するわけですから、その使途についてはさらに目を光らせる必要があり
ます。今回の改正ではバブル後の地価の下落と格差の固定化防止がその趣旨にうたわれていますが、格
差の固定化防止に着目すれば、そこに重点的な予算措置が講じられなければなりません。また、今回の
もっとも大きな改正点は、基礎控除額の引き下げと最高税率の引き上げです。基礎控除額の引き下げは
相続税が多くの国民にとって身近になったとも言い換えることができます◆相続税が身近な存在になっ
たことについては何とも言えませんが、今回の増税についてはやはり個人的には?なのです。デフレか
らの脱却ということと地価の上昇は少なからず関係はあるでしょうし、経済政策と税制とがうまくかみ
合っていない印象です。デフレからの脱却により、企業業績が良くなり、労働者賃金が上がるとともに
経済格差も是正され、株価も上昇するといった良いスパイラルが生まれることを税制が足を引っ張るこ
とになるのではないかと心配するのは杞憂でしょうか。国の経済成長にとって税制は非常に重要な役割
を果たしてきたということを忘れてはならないはずです。