I.税務訴訟と税制改正
財務省が13年度末の国債や借入金、政府短期証券をあわせた「国の借金」の残高を発表しました。そ
れによれば、13年度末の残高は1025兆円弱となり、12年度末より33兆円余り増加し過去最大
となったことが報じられました。そんな中、同日の新聞紙面では二つの税務訴訟関連の記事が大きく掲
載されました。二つの訴訟とも国側の敗訴となったため、取り扱いが大きかったものと思われますが、
一つは外れ馬券の問題。もう一つは日本IBMグループのグループ内取引の問題でした◆前者について
は、一審で国側が敗訴しており、それに対し国側が控訴を行ったものでした。こちらについては、本誌
の別コーナーですでにふれたとおりです。本件はネットでの馬券購入であったため所得の捕捉ができた
ものと思われますが、現金購入の場合には所得の捕捉は現実的には無理です。いわゆる「正直者は損を
する」という制度上の欠陥も指摘できます。また、サッカーくじの当選金は非課税なのに競馬の払戻金
はなぜ課税なのかという疑問もあるでしょう。これは売上に対する国庫納付金の割合によるものと思わ
れますが、であれば競馬の払戻金の国庫納付金割合を上げたうえで、払戻金を非課税にするなど課税の
公平性も担保するルールが必要でしょう。ファンが競馬を楽しむためにも◆日本IBMグループの問題
については、争点が似ているということではヤフーが課税処分の取り消しを求めたものがあります。こ
ちらは、東京地裁がヤフーの請求を棄却し国側が勝訴しています。いずれも、企業グループ内での取引
を利用した「租税回避行為」として国側が追徴課税を行ったものです。この事案については、組織再編
税制やグループ法人課税と呼ばれるかなり専門的な分野についての説明が必要になるため、あまり深入
りはしないことにします。ただ言えることはこの問題は法の隙間をつく企業側と国側との「いたちごっ
こ」になっているというのが現実です。10年度の税制改正により日本IBMグループのスキームは現
在では課税されることになったことに、それが見て取れます◆さて、前置きが長くなりすぎ今回は本論
に進むことができませんでしたが、来年に施行が決定している税制改正=相続税の増税について一言だ
け触れておきたいと思います。いろいろ個人的意見はありますが、施行が決定している以上、準備や対
策だけはしっかりしておきたいものです。この問題については、次号で取り上げたいと思います。