V.電王戦に見る 異なる構図

 人間VSコンピュータ。今年で3回目を迎えた将棋の電王戦。大方の予想通り、昨年に続きコンピュ ータが勝ち越すという結果に終わりました。昨年行われた第2回ではコンピュータ将棋がどれほど強く なったのかにかなり注目が集まりました。  しかし、今回でその強さは明確に証明されたといっても過言ではないでしょう。しかも、今後ますま すコンピュータは進化して強くなることも間違いありません。  主催するドワンゴ社は来年以降もこの電王戦を続けることを表明していますが、この結果からしてこ の企画を続けることの意味について疑問も生じます。  コンピュータ将棋がプロの将棋棋士に勝つのは不可能だとも言われてきました。しかし、将棋界の第 一人者である羽生氏は「いつか必ずコンピュータ将棋は人間を超える」と明言してきました。その予言 どおり、研究者たちの努力の結果によりそれが事実になりました。この事実は、決してコンピュータが 人間に勝ったということではなく、人間たる研究者たちの勝利です。  そう考えると、人間VSコンピュータという構図ではなくプロの将棋棋士VSコンピュータ研究者と いう異なった構図が見えてきます。  今後はお互いがさらに向上し、面白い対局を見ることができることに大いに期待したいものです。将 棋というゲームは勝ちか負けしか結果はありませんが、もっと重要なのはその内容なのです。勝敗は二 の次です。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)