V.これが一番重要なこと

忘れかけていたことが突然よみがえりました。きっかけは、新聞紙上でアキュフェーズ社のことが紹介 されていたことでした。 どんな会社かといえば、高級オーディオ機器を製造販売している会社です。ちなみにスピーカーの製造 は行っていません。 一口に音楽を楽しむといっても、その楽しみ方も多様化してきました。しかし、同社のコンセプトは明 確です。そのコンセプトは、私たちがコンサートホールへ足を運ぶのではなく、逆に一流の指揮者やオ ーケストラを自宅に招くというものですから、その音質や臨場感に対する追及は半端ではありません。 100万の機器と3万円の機器で聞く音楽に違いがあるかといえば、それに正解はないと思います。音 質が自分好みであるかどうかや楽曲の指揮者や演奏者に左右される部分が最も大きいと思うのがその理 由です。 私自身もこの楽曲だったら、この指揮者でこのオーケストラだといったこだわりやそれを探す楽しみが あります。その組み合わせを見つけるためには人から見ればバカとしか思えないようなお金の使い方を してしまうこともありますが。 もう一つ私には、その見つけ出したCDをアキュフェーズ社の機器でぜひとも聞いてみたいといった願 望も強くあります。同社の音質はやはり独特なものがあり非常に魅力的です。 だったら、いっそアキュフェーズ社の機器を分割払いででも買えばいいじゃないかと思われるかもしれ ません。でもそれは違うんです。高級オーディオ機器に対する憧れ。これが一番重要なことなのです。 もし、手に入れてしまったら自分の楽しみが一つ減ることになります。 憧れはあくまでも憧れで良いのです。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)