II.期待したい FRB新議長の手腕
最近の報道で気になったことが二つあります。一つは、「個人的見解」としながらも、大変な問題にな
ってしまったNHKの籾井新会長の就任記者会見での発言についての報道です。連日にわたり多くのメ
ディアから執拗に追及され、ついには国会にまで呼ばれて答弁を求められることになる大騒動になって
しまいました。質問をした記者はその立場からすれば当然のことで問題はないと思います。しかし、そ
れに個人的見解として答えるご本人の見識については疑問を感じます。内容については賛否あるようで
すからともかくとしても、貴重な国会審議の時間を無駄にしてしまったことは残念でした◆もう一つは、
冬季五輪を巡る各メディアの報道です。内容があまりにもドメスティックで内向きだという指摘があり
ます。日本選手だけにあまりにも報道が集まりすぎているというものです。開会式では、IOCの新会
長バッハ氏が「五輪は差別なく多様性を受け入れる祭典だ」と宣言しました。にもかかわらず、各メデ
ィアは日本人だけの応援団になってしまったかのようです。私たちが日本人選手の活躍を応援するのは
当然としても、その活躍も他国の素晴らしい選手たちの活躍があってのことです。様々な国や地域の選
手たちが立場を超えて高いレベルの技を競う場が五輪であり、単なるメダル獲得競争をするのはW杯な
ど別の競技会に譲るべきでしょう◆だからというわけではありませんが、今回は米国に目を向けてみる
ことにしました。その中でも、やはり世界経済に最も影響力を持つポストに就いたFRB=米連邦準備
制度理事会の新議長イエレン氏に注目をせざるを得ないようです。以前、オバマ米大統領の失敗の一つ
にFRBの新議長の選任が意のままにに進まなかったことが指摘されたことがありました。当初、ホワ
イトハウスが次期議長としての起用を考えていたのは、元財務長官を務めたサマーズ氏であったことが
知られています◆報道によれば、その流れが大きく変わったのは「女性政策研究所」所長のハートマン
氏が始めた署名活動だったとのことです。昨年9月に大統領のもとに届いた嘆願書の内容はイエレン氏
の起用を促すものであり、その署名の半数以上はノーベル賞学者や元FRB副議長をはじめとする男性
のものだったそうです。当初は適任なポストが男性にしばしばさらわれていることに対するいら立ちが
動機の一つだったそうですが、性別を超えた支持は圧倒的で与野党を超え米議会をも動かすことになり
ました◆ハト派と言われ量的緩和を推し進めてきた同氏のスタートについて、ある経済紙は「海図なき
航海」と評していましたが、まさにその通りです。歴史的な規模の金融緩和を縮小する、というかつて
誰も経験したことのない重責を担うことになるわけですから無理もないことです。意見の異なる委員を
束ねる対話力に卓越するといわれるイエレン氏も就任早々、市場から冷や水を浴びました。歴代のFR
B議長も同様なことがあったようですが、過去と比較して現在の世界経済の構図は常にかつスピーディ
ーに変化しています。今後の手腕に大いに期待したいものです。