V.芥川賞作家の書いた観戦記
将棋というと皆さんはどんなイメージをもたれるでしょうか。なんでも最近、将棋ファンが増えている ということを耳にしました。その原因はよくわかりませんが、漫画の「ハチワンダイバー」や将棋のプ ロ棋士がコンピューター将棋と対局する「電王戦」の影響が大きいのは間違いないでしょう。 日本将棋連盟の谷川会長も「最近の将棋ファンは、楽しみ方が多様になってきているのでその対応が急 務だ」と発言されています。 著名人としては、芥川賞作家の朝吹真理子氏が将棋の観戦記を書いています。ご本人によれば、「将棋 の観戦」がご趣味のようで、将棋の面白さを独特の感性で語り、さらに対局室や対局上で繰り広げられ る人間模様にも大きな関心を寄せられているようです。 彼女の書いた観戦記を拝読しましたが、将棋の技術的なことには一切触れず、棋士の仕草などの描写が あったりと、通常の観戦記ではお目にかかれないことがたくさんちりばめられ、非常に興味深いもので した。芥川賞作家の手にかかれば、こんなにも面白い観戦記になるのかと感心したものです。 かくいう私も、「将棋の観戦」を趣味に持つ一人です。私が最も興味を持つのは、将棋では自分が次の 手を指すと必ず自分の形勢が不利になるという局面が登場するところです。どんな手を選択したとして もです。たとえ対局者が将棋界第一人者の羽生氏であってもです。パスというルールはありませんから、 何らかの手を選択しなければなりません。はたしてこの局面にどう対応するのか? チョッと変わった趣味かもしれませんが、プロ棋士それぞれの力量がもっとも問われる場面だと個人的 に思うからです。 一口に趣味といっても楽しみ方は多様ですね。(覆面ライター 辛見 寿々丸)