V.「闘将」が「名将」に変わった瞬間

東北楽天ゴールデンイーグルスの日本一が決定した瞬間、チームを指揮する星野仙一監督の目には光る ものがありました。「闘将」と呼ばれた同監督が「名将」に変わった瞬間です。 意外にも星野監督が指揮する球団が日本一になったことはありませんでした。しかし、今回、原辰徳監 督が指揮する読売ジャイアンツに勝ったことに強いドラマ性を感じます。 時は遡ります。2003年秋、リーグ優勝を逃し無念の辞任に追い込まれた原監督に、甲子園球場で花 束を渡し激励したのが当時阪神の監督であった星野監督でした。 以来、原監督は星野監督を兄のように慕うようになったのは有名な話です。 原監督といえば、ドラフト会議で意中の巨人に指名され、その後も指導者として順風満帆な道を歩んで いたと思われていたにもかかわらず、このような事件が起こってしまいました。 一方、星野監督は当時、相思相愛といわれていた巨人からドラフト指名を受けることがかなわず、中日 に入団後は打倒巨人がライフワークのようになっていました。 今季、長嶋終身名誉監督の5度を上回る6度目のリーグ制覇を果たし、名実ともに「名将」の称号を手 中にした原監督との対戦を星野監督が心待ちにしていたのは疑いようもありません。 かつて激励して、見事によみがえった原監督との対戦なのですから。 選手たちの対決はもちろんですが、星野監督と原監督の対決。一見好対照とも思えるお二人ですが、野 球に対する情熱の強さはお互い譲ることのできないものだったに違いありません。 監督同士の対決という意味でも後世に語り継がれる名勝負でした。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)