I.公立高校の授業料無償化に所得制限

2010年度に民主党政権で導入された公立高校無償化が見直されることになりました。 自民公明両党の合意案では来年度からは所得制限が導入され世帯年収が910万円以上の世帯について は授業料を支払うことになりそうです。 また、私立に通う高校生への就学支援金の加算も世帯年収590万円までの世帯となる予定です。 この所得制限導入で浮く財源は約490億円で低所得者への返還不要の奨学金や私立高校へ通う世帯へ の支援拡充にあてられる予定です。 このニュースを聞いて、私はまたか・・と思いました。 児童手当の960万円の所得制限といいこの国では年収1000万円あたりの世帯に対する実質的な増 税が平常化しています。 年収1000万円を超える世帯を優遇しないことで、それ以外の有権者からのばら撒き批判をかわせる とでも考えているのでしょうか。 そもそも年収1000万円前後の世帯は余裕があるという前提がおかしいように思います。 高校生を抱える40代から50代の世帯は住宅ローンや教育費負担をかかえ年収1000万円といえど も決して余裕のある収入ではありません。 また、年収が909万円の家庭は無償だが910万円になるといきなり年間11万8000円の授業料 がかかってしまうという所得制限をかける際の逆転現象も問題です。(そもそもここでいう世帯年収と は何を指すのかあいまいですが) また、日本はただでさえ教育費への公的支出割合が低く、OECDで最下位と言われています。] ヨーロッパでは高校まで無償は当然。 大学まで無償という国もあります。所得制限はこの世界的な流れにも逆行しています。 しかも、この見直しには世帯所得の把握や授業料の徴収等の行政コストがかかります。 自治体からはシステム導入が間に合わないとして導入の延期を申し出ているところもあります。 行政コストを考えると財源獲得の効果は薄いように思います。 また、授業料を払わない家庭に対して以前のように先生が支払いをお願いにいくという学校側の負担も 気になります。 低所得者への奨学金などは必要とは思いますが、安易な所得移転策ではなく復興予算の適正な予算執行 (被災地でもない地域のゆるきゃらに1000万円とかありえないですよね)等、見直すところはいく らでもあると思うのですが。

(税理士・CFP 廣崎 英子) HP:横浜の税理士 廣崎英子税理士事務所 ブログ:税理士 ときどき ランナー