V.特別な日の忘れられない光景

8月6日。日本人が決して忘れてはならないとされる日のうちの1日でした。(他の2日は6月23日 と8月9日) この日、広島ではマツダスタジアムでプロ野球の広島−阪神戦が「ピースナイター」として行われました。 広島というチームは復興のシンボルとして愛されてきた球団です。最近では、関東圏で開催される試合でも、 多くの観客がレフトスタンドを真っ赤に埋め尽くすという光景がよく見られます。 幸運にも、私はこの試合をテレビ観戦することができました。  イベントのクライマックスは5回終了時にやってきます。 いつもは赤が目立つスタンドが緑一色に変わり「被爆ピアノ」を使った伴奏で、この試合の始球式を務 めた広島県出身の歌手・吉川晃司さんが「イマジン」を独唱しました。放送席に場所を移した吉川さん が、「僕は、仕事の関係で東京で生活しているけれど、僕の魂はいつもここ被爆地広島にある。」と話 していたのが非常に印象的でした。 球場には半旗が掲げられ、プレーボール前には選手と観客が祈りを捧げた特別な試合。 先発マウンドに立ったのは、日本のエースへと成長した前田健投手です。特別な日の広島での試合とあ っていつもとは違う気合が感じられました。と同時に、かつて大阪出身である同投手が広島に寄せる特 別な気持ちについて語っていたことが思い出されました。 最後の締めくくりは、この日のお立ち台に立った千葉出身の丸選手の言葉です。 「特別な日に、広島のお客さんと勝利を喜べて非常にうれしい。」その時なぜか、そのお立ち台の傍ら には水を持って待機する磯村選手(夏の甲子園大会で優勝した中京大中京高校の捕手で、同球団の堂林 選手の女房役を務めた選手です。)の姿があります。磯村選手から水を受け取り、おいしそうに一気に 飲み干した丸選手の笑顔。ファンの誰にとっても一生忘れられない光景でした。 「カープ愛」ここにありです。 *デイリースポーツにチョッとだけ対抗してみました。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)