II.課題の先送りはもうたくさん
◆財務省は「国の借金」の残高が、13年6月末現在で1000兆円を超えたと発表しました。報道に
よれば、7月1日時点の総務省の人口推計をもとに単純計算すれば、1人あたり約792万円の借金を
抱えていることになるそうです◆また、その直前に報じられた国の中期財政計画案によれば、国と地方
が抱える基礎的財政収支の赤字(対国内総生産に対する割合)を15年度までに10年度の割合から半
減して3.3%、20年度までにゼロにする目標を掲げているとのことです。この計画案は、消費増税
を予定通り行ったことを前提としています◆さらに、この直前には首相が今後予定する消費増税による
景気や物価への影響を再検証するよう指示したことが明らかになっています。その内容は、@予定通り
2段階で引き上げるA最初に2%上げ、その後1%ずつ引き上げるB5年間で1%ずつ引き上げるC増
税を当面見送るの4案とされています。併せて、予定通り引き上げた場合に必要な対策を財務省や経済
産業省などに指示しました◆以下は、私なりの三段論法です。まず、「国の借金」が大変です。生まれ
たばかりの赤ちゃんが、いきなり792万円もの借金を抱えることになります。次に、国の中期財政計
画は国際公約としてG20の場で説明し、各国の理解を得なければなりません。ただ、この計画は案の
段階では消費増税が前提となっているわけですから、その前提について有識者を交えてしっかり検証を
しておく必要があります◆すでにお気づきかと思いますが、これは時系列から言えば反対になります。
正しくは、消費増税の再検証の指示 → 中期財政計画での基礎的収支の赤字解消 → 国の借金が100
0兆円超と発表という順序になります。どうでしょう。この順序で並べてみると、受ける印象がかなり
変わります。◆消費増税はやむを得ないと思うけれどその悪影響はキチンと再検証してくれるんだ →
でも、経費が税収より多いというのは問題だよね → 「国の借金」がついに大台に乗ってしまったのか。
いよいよヤバイ。消費増税はやっぱり必要だ。こんな感じでしょうか。実に理路整然としています◆そ
もそもこの消費増税は、社会保障と一体となって議論することになっていたはずです。もっとも、社会
保障の議論も国民会議において一定の結論を得たという反論もあるでしょう。いずれにせよ、問題の先
送りをしている時間はないし、もうたくさんだというのが多くの意見だと思うのですが。