I.富裕層が海外へいく理由

先日某テレビ番組で富裕層が国外に脱出しているという特集をやっていました。 平成27年から相続税の基礎控除の縮小や高所得者の所得税の最高税率を40%から45%へ引き上げ ることが決まっています。また、社会保障についても超高齢化社会へむけて負担能力別の負担にする方 向性が(つまり高所得者の負担を増加する)打ち出されています。 現在の日本の国民負担率(所得に対する租税負担率+社会保障負担率)は40%(2013年度見通し (財務省HPより))ですが、今後これが高くなっていくのは明らかです。 よく高福祉高負担の例として挙げられるスウェーデンですが、国民負担率は58.9%(2010年) です。日本の40%と比してすごく高いように思われますが、20歳未満の医療費は無料、教育費も大 学まで無料。8歳までの育児休業手当て、年金保険料を払っていなかった人には月額9万円前後の保障 年金と手厚い福祉が用意されています。 日本の2025年の国民負担率は60%になるとの各種予測が出されていますが、日本ではたとえ国民 負担率が60%になったとしてもスウェーデンのような高福祉国家にならないことは明らかです。とい うより今より一人あたりの給付水準は下がるでしょう。 さらに現在でも潜在的負担率(国民負担率に財政赤字負担比率を加えた率)は51%もあるのです。所 得の半分以上が税や社会保障に費やされている状況です。これは全国民の所得に対する比率なので所得 が多い人にとっての負担率はさらに重くなります。現在日本の所得税の最高税率は40%、住民税は 10%、健康保険(介護保険含む)の料率は11.53%(個人負担分はその半分)厚生年金保険料の 料率は17.12%(個人負担分はその半分)なので、高額所得者は、会社負担分を除き社会保険料の 上限を考慮したとしても、ざっと60%は所得税・住民税と社会保険料として徴収され、さらに消費税 や酒税、揮発油税などの税金も払っているわけです。 社会保険料の料率は2025年まで毎年あがる予定ですし、所得税の最高税率も45%になり、消費税 も上がるとなると高額所得者に対する社会保険、税の負担割合は70%を超えてくるでしょう。これで は、所得税率が低く相続税・贈与税のないシンガポールなどの国へ脱出したくなる気持ちもわからなく ありません。高額所得者への安易な増税により国内の税金がかえって減少することにならないように考 える必要があるようです。

(税理士・CFP 廣崎 英子) HP:横浜の税理士 廣崎英子税理士事務所 ブログ:税理士 ときどき ランナー