II.資産運用と金融リテラシー

2ヶ月間にわたって株式投資に触れてきましたが、株式投資を行うべきかどうかと問われれば、その答 えはYESでもあり、NOでもあります。しかし、資産運用が必要かどうかと問われれば、その答えは YESです。株式投資は資産運用の一つであるというのがその理由ですが、資産運用は将来の様々な場 面に備えるためにも必要不可欠です◆我が国では、学校教育や家庭教育の場において金融について学ぶ 機会がほとんどないようです。その結果として、日本人のいわゆる金融リテラシーは非常に低いという のが現実です。日常生活に非常に密着しているにもかかわらず、そのリテラシーが低いというのは大問 題です。例えば、教育資金や住宅購入資金の準備などは多くの人がいずれ直面することなのにもかかわ らずです。さらには老後の生活資金の問題もあります◆今回、株式投資を取り上げたのにはそれなりの 理由があります。前号までで触れたように株式投資には必勝法もありませんし、元本保証もありません。 さらに、プロと同じ土俵で戦うわけです。そういった意味では、金融リテラシーを高めるにはうってつ けなのではないかと思ったからです。前号で「プロの仕掛ける罠に引っかからないためには、取引の技 術を磨くことであり、それは単純に自分が得意とするパターンなり方法を会得することである」と結び ました。では、具体的にはどうしたらよいのでしょうか?◆まずは、実戦です。実際に株式取引を行っ てみないことには、自分にとってどんなパターンなり方法が向いているのかはわかりません。注意点は ただ一点です。最悪の結果に終わっても困らないように、少額の取引からスタートすることです。よほ どのことがない限り、最悪の結果にはなることはありませんから、いろいろな取引方法を試してみるう ちに自分に適したものが見つかると思います。ただし、長く投資を続けていくうえでどうしても必要な スキルはあります。それは、どうやってリスクをヘッジ=回避・軽減するかということです。というの も、リターンは管理できませんがリスクは管理することができるからです◆一例をあげると先物取引を 使う方法です。例えば、1万3000円で日経平均株価という株を100株買ったとします。それと同 時に、ミニ日経平均先物も同額で売っておきます。(先物の場合は現物株と違って売り買いどちらから でも始められます。取引単位は価格の100倍を1単位=1枚として売買します。価格が1万3000 円であれば130万円が最低投資金額になりますが、先物は売り買いの差金決済のため130万円を用 意する必要はありません。代わりに証拠金という一種の担保を差し入れることになります。この証拠金 額は証券会社によって異なりますが、1枚10万円前後が多いようです。)◆その後、日経平均株価と いう株が1万2000円に値下がりしたとすれば、株には10万円の含み損が生じますが逆に先物には 10万円の含み益が生じるため、株の損失を相殺することができます。(手数料等は考慮していません 。)先物を使う場合の注意点を二点あげておきます。先物の場合には、3ヶ月ごとに決済日があること と、ヘッジの規模を保有資産の時価の範囲内に収める必要があることです。この例で、2枚先物を売る と金額は260万円。手持ち株の時価は130万円ですから、ヘッジ額が過大ということになります。 先物は少ない元手で大きな金額を取引することができますが、思惑が外れると証拠金が目減りし、証拠 金の追加差し入れが発生することがあります◆来年からはNISAと呼ばれる制度もスタートします。 各証券会社では口座開設が活況のようです。投資を始めるには良い機会かもしれません。ただし、投資 の基本はあくまで分散投資であることはくれぐれもお忘れなく。

(財務アナリスト 浦邊 謙佑) HP:ぜいりし.com 浦邊剛至税理士・行政書士事務所 ブログ:会計事務所の一日