I.成年後見制度を利用しよう
成年後見制度利用者の選挙権を認めなかった公職選挙法の規定は憲法違反だとして、選挙権があること
の確認などを求めた訴訟が7月18日、札幌地裁で和解しました。東京、さいたま、京都の同様の訴訟
でもすべて国と原告の間で和解が成立しています。
●成年後見制度とは
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管
理したりするのが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であってもよくわからずに契約を
結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し、
支援するのが成年後見制度です。
●法定後見制度と任意後見制度
成年後見制度には家庭裁判所が成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)を選ぶ法定後見制度と、
自らが任意後見人を選んで療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える任意後見制度があ
ります。
●法定後見制度の種類
@後見 精神上の障害により、判断能力が欠けているのが通常の状態にある方を保護・支援するため
の制度です。家庭裁判所が選任した成年後見人が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約など
の法律行為をしたり、本人がした不利益な法律行為を後から取り消すことができます。ただし、自己決
定の尊重の観点から、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については取
消しの対象になりません。
A補佐 精神上の障害などにより、判断能力が著しく不十分な方を保護・支援するための制度です。
この制度を利用すると、お金を借りたり、保証人となったり、不動産を売買するなど法律で定められた
一定の行為について、家庭裁判所が選任した保佐人の同意を得ることが必要になります。ただし、後見
制度と同様に日常生活に関する行為については、保佐人の同意は必要なく、取消しの対象にもなりませ
ん。
B補助 軽度の精神上の障害により,判断能力が不十分な方を保護・支援するための制度です。この
制度を利用すると,特定の法律行為について家庭裁判所が選任した補助人に同意権・取消権や代理権を
与えることができます。ただし日常生活に関する行為については、補助人の同意は必要なく、取消しの
対象にもなりません。
●任意後見制度
任意後見制度は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に
備えて、あらかじめ自らが選んだ任意後見人に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務につい
て代理権を与える任意後見契約を公証人の作成する公正証書で結んでおくというものです。そうするこ
とで、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が、本人を代理して契約をすることによって、本人
の意思にしたがった適切な保護・支援をすることが可能になります。
●これからの後見制度
日本では後見制度の利用率が他の先進諸国に比べて低いのですが、超高齢化が進むなか、成年後見制度
の必要性はますます高まっていくと思われます。税理士会でも被成年後見人の権利保護と成年後見制度
の普及にむけて積極的に活動を行っています。
成年後見制度についてご相談したい方は気軽に税理士に相談してみてください。