I.株式投資に必勝法はありません
5月23日の東京株式市場では記録が相次ぎました。東証1部の売買代金・売買高はともに過去最高、
日経平均先物(中心限月)の売買高も過去最高となりました。ちなみに、この日の日経平均は13年
ぶりの1143円の大幅な下落で取引を終了しています◆偶然にも小欄で、2000年頃に雰囲気が
似ていると指摘させていただいたばかりでした。雰囲気は似ているもののその中身は全く異なるので、
その点について触れたいところですがこのような現象は市場では、時々あることなので無視して、今
回も本論を続けたいと思います◆前号では、初めて投資にチャレンジする方に私なりのアドバイスを
させていただきました。その1が「一通りの勉強は必要である」こと。その2が「銘柄選択に必要以
上に時間をかける必要はない」こと。その3が「投資する銘柄は少なくて良い」こと。以上の三つで
した。少し掘り下げてみます◆まず、その1の「一通りの勉強」についてです。書店に行くと「○○
必勝法」とか「絶対勝つ○○」といったようなビックリするようなタイトルの投資関係の本がたくさ
ん並んでいます。株式投資に必勝法はありません。どちらかといえば「これだけはやってはいけない
○○」といったようなネガティブとも思えるような文庫本を一通り読んでおくのが役に立つと思いま
す。1時間程度で読めるようなもので十分です。なぜなら、最初は難解だと思いますが、自分にとっ
て重要な部分は何回か読み返すことになるからです◆次に、その2の「銘柄選択」とその3の「投資
する銘柄は少なくて良い」についてです。ここでは私の経験をご紹介します。私は5年くらい前に実
験のために2つの口座を設けました。一つの口座は銘柄選択に非常に時間をかけ、かなりの銘柄に分
散して投資しました。投資信託の真似事をしてみたかったということです。ある意味、私自身の趣味
の領域でもありますので真似はお勧めしません。もう一つの口座の銘柄選択にはほとんど時間をかけ
ませんでしたし、銘柄も多くはありません◆途中経過なのですが銘柄選択に時間をかけ、かつ多くの
銘柄に分散して投資した口座は100万円の投資元本に対して110万円の評価額なのに対し、もう
一つの口座は100万円の投資元本に対して125万円の評価額でした(5月末現在)。結果的には、
銘柄選択に時間をかけず、かつ少ない銘柄に投資した口座のほうが成績が良かったことになります◆
市場ではプロとアマが同じ土俵で戦っています。プロは時々市場で罠を仕掛けることがあります。プ
ロに対しての罠なのですが、土俵が同じである限り個人投資家も結果的には罠を仕掛けられたことに
なります。アマにハンディがもらえれば良いのですが市場ではそんなことはありません◆「一通りの
勉強」の中で、株式の取引といってもある会社の株を現物で買って値上がりしたら売るだけが取引の
方法ではないことは学んでいるはずです。例えば、信用取引だったり、先物取引についても本には説
明があったはずです。重要なのはプロの仕掛ける罠に引っかからないことです。そのためにはいった
いどうすればよいのだという疑問もわいてくると思います。答えはいたって簡単です。株式の取引の
技術を磨くことです。といっても、難しく考える必要はありません。要は、自分が得意なパターンな
り方法を会得すること。それに尽きると思います。具体的なことについては次号へ続けたいと思いま
す。
II.はずれ馬券訴訟その2
はずれ馬券が経費にあたるかどうかが争われた裁判で、大阪地裁ははずれ馬券の購入費用も経費にあ
たるとの判決を下しました。
この裁判については以前にもこのコラムで触れたのですが、興味をもたれた方が多かったので改めて
この裁判について触れてみたいと思います。
<事件の概要>
会社員の男性が2007年から2009年までの3年間に約28億7000万円分の馬券を購入し、約30億
1000万円の馬券配当を得ました。
利益は約1億4000万円でした。男性は馬券配当で得た所得を申告しなかったため2009年までの3年間に
約5億7000万円を脱税したとして所得税法違反に問われ 無申告加算税を含む約6億9000万円を追徴課税
され、男性は裁判所に無罪を訴えていたというものです。
<大阪地裁の判決(平成25年5月23日)>
判決では「元会社員は無差別に一定の条件で網羅的に購入し、多額の利益を得て、娯楽ではなく、資
産運用の一種ととらえていた」と指摘、外国為替証拠金取引(FX)などと同じ雑所得に分類しまし
た。そして、払戻金から全ての馬券の購入費を経費として差し引き、実際のもうけの約1億4000
万円を競馬の所得と結論付け、脱税額を約5千万円と大幅に減額しました。
なお、無申告の違法性は認め、懲役2月、執行猶予2年の有罪としました。
<争点>
この裁判では馬券の払戻金が一時所得であるか雑所得であるかが争点となっています。
所得税法では所得を利子所得、事業所得、給与所得、一時所得、雑所得など10種類に区分していま
す。
一時所得は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての
性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」をいいます。
懸賞金、生命保険の一時金などが該当します。
雑所得は他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、著述家や作家以外の人
が受ける原稿料や印税、講演料などが該当します。
一時所得の計算方法は「総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)=一時
所得の金額(課税されるのはその2分の1の金額)」です。
「その収入を得るために支出した金額」とは、「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を
生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」とされています。
雑所得の計算方法(公的年金等以外)は「総収入金額-必要経費」です。
一時所得だとすると「直接要した金額」のみが経費とされるため、はずれ馬券は経費になりません。
一方雑所得だとするとFX同様、はずれ馬券の購入費(損失)も当り馬券の戻し金から控除すること
が可能になります。(FXでは差金決済による差損は差金決済による差益と相殺できます)
<まとめ>
大阪地裁の判決では、会社員の言い分をほぼ認め、継続的に資産運用としている馬券購入については
雑所得とするという判決が下されました。
しかし、国税不服審判所などで同様の案件が争われた場合にはほとんどが国税側の勝訴となっていま
す。
大阪地検も大阪高裁に控訴しているので、今後どうなるかはまだわかりません。
ただ、税を負担する能力に応じた課税という租税の原則から考えると、実際の利益を大きく上回る課
税には違和感を感じざるを得ません。
III.地域情報サイトからの情報発信
スマートフォンの普及にしたがって、今いる場所の周辺の情報を調べることができるサービスも増えて
きました。
Yahoo!Japanは2011年6月に従来の「地図」「グルメ」「クーポン」などのサービスを「Yahoo!ロコ」に
統合しました。
トップページではユーザーの現在地を判定し、気象情報や地域に関連するニュース記事等を自動的に表
示します。都道府県単位でジャンル別・エリア別にお店や施設の情報を探せるようになっています。
YahooのIDでログインすると「いつも見るエリア」の登録や、チェックした情報をキープしたり口コミ
情報を投稿することもできます。
この地域情報サイトにお店や施設の情報を載せるには「Yahoo!ロコ プレイス」というサービスを利用
します。定型のレイアウトに営業時間・商品やサービスの情報・地図・写真などを掲載できるほか、
クーポンの発行・メッセージ送信・投稿された口コミへの返信などの機能もあります。
「Yahoo!ロコ プレイス」で公開した情報は「Yahoo!ロコ」から検索・閲覧することができます。
ブログや公式ホームページへのリンクも設定できるようになっています。
「Yahoo!ロコ」のURL:http://loco.yahoo.co.jp/
(Webデザイナー)
IV.住民税ってなんだろう
社会人2年目の方であれば、今月のお給料から住民税が天引され始めたのではないでしょうか?毎月の
給与からいろいろなものが天引されていて、正直よくわからないという方もいるかと思います。
住民税ですが、会社が各市区町村へ「給与支払報告書」というものを提出し、その金額を基に市区町村
が住民税を計算するという仕組みになっています。
毎年1月1日現在の住所地で前年の1月から12月までの1年間の所得に対して課税されます。
その為、年の途中で他の地域へ引越しをしても、1月1日に住んでいた市区町村へ住民税を支払うこと
になります。
所得税は毎月の給与からその月の源泉税を差引いていますが、住民税の場合は、前年度の住民税が差引
かれているため、退職して無職になっても、住民税の支払義務は発生します。
退職してしばらくゆっくりしようと考えているところに、住民税の納付書が届きギョッとしたという方
も少なくないはずです。
ちなみに、会社などで給与から天引される形のものを特別徴収といい、本人に直接納付書が送付され、
自分で納付することを普通徴収と言います。
自営業などをしている人は年4回に分けて自分で納税し、年金所得者は年金から6回に分けて天引きさ
れる仕組みになっています。
余談ですが、住民税は道府県民税、市町村民税合わせて10%の所得割と4千円の均等割と決まってい
ますので、住むところによって金額が違ってくる、などということはありません。
(企業会計アドバイザー 米山 裕子)
V.文学に寄り添う音楽の役割(2)
村上春樹氏の「神の子どもたちはみな踊る」という作品。その中では、どんな音楽が登場するのかご紹介
したいと思います。
第一話「UFOが釧路に降りる」
ここで登場するのは、ビートルズとビル・エバンス。
いずれも主人公のコレクションなのですが、同氏の「ノルウェイの森」という作品でもこの組み合わせが
あったと思います。
第二話「アイロンのある風景」
パール・ジャムが何の紹介もなく登場します。
音楽界の最高峰であるグラミー賞を受賞したロックバンドです。
第三話「神の子どもたちはみな踊る」
具体的なものは登場しません。
ただ、「踊る」という言葉から潜在的な音楽の存在を意識することができます。
また、主人公がディスコで踊る姿が蛙に似ていることから、ガールフレンドは彼を「かえるくん」という
ニックネームで呼びました。
この「かえるくん」という存在は、この後の作品でも登場します。
第四話「タイランド」
最初に登場するのがビーチボーイズ。デビュー作でも登場したバンドです。
その後は、ジャズのオンパレード。歌手名や演奏者名をはじめとして曲名も具体的に描かれています。
しかし、印象的だったのは主人公の別れた夫がオペラしか聴かない人物だったという点です。
さらに、「オペラ・マニアはたぶん世界でいちばん根性の狭い人種」だと主人公は語っています。
第五話「かえるくん、東京を救う」
この作品には音楽は登場しません。
第三話で「かえるくん」と呼ばれた主人公=神の子ども?を強く意識します。
第六話「蜂蜜パイ」
シューベルトの鱒がクラシックの具体的なものとして初めて登場。
主人公は作品の最後に、彼のこれからを決める重要な決断をします。
私自身、音楽をこれほど強く意識して文学作品に触れたことはほとんどありませんでした。
しかし、村上氏が周到に様々な音楽をその作品の中に意図をもってちりばめているのは明らかです。
ある評論によれば、ジャズ=郷愁、クラシック=異界への予兆という使い分けがなされているということ
ですが、そう言われればそれも的確な分析なのかもしれないと思ってしまいます。
ノーベル文学賞候補の常連でもある同氏です。
どうして海外で多く読まれているのか、なぜか文学作品なのに音楽が議論になったりするのか。
納得するには十分すぎる作品でした。
(覆面ライター 辛見 寿々丸)