I.初めて投資にチャレンジする方へ
米国のニューヨーク株式市場でダウ30種平均・S&P500種指数がともに史上最高値を更新した
のに続き、ドイツのフランクフルト市場でも株価指数=DAX指数が史上最高値を更新しました。我
が国においても昨年末からの回復傾向は顕著で、市場も活況を呈しています。現に私もあるネット証
券にアクセスしようとしてもしばらくアクセスできないということがありました◆「幅広い銘柄への
分散投資を継続すれば必ずプラスのリターンが得られる」というのが株式投資の大前提とされていま
すが、我が国でもそれが定着するのかどうなのかの正念場を迎えています。4月24日掲載の日経電
子版の記事では、「日経平均が1万4657円を超えると、日経平均に連動する株式に長年、こつこ
つと毎日同じ金額を投資し続けた投資家は、どの時点で投資を始めた人でも全員、含み損を解消して
プラスに浮上できる」と報じられました。この投資手法はドルコスト平均法と呼ばれるものですが、
その手法の優秀性が再認識される機会にもなりそうです◆「貯蓄から投資へ」と呼びかける政府でし
たが、株式相場が低迷した環境の下では、どんなに税制その他の優遇措置を設けてもその効果はあり
ませんでした。しかし、直近の相場を見れば、投資に慎重な人でも「投資を始めたい」あるいは「再
開したい」と思う人たちが増えるのも当然かもしれません。私の知る限りでは、最近ではいわゆるI
Tバブルと呼ばれた2000年頃に雰囲気が似てきたような気がします◆ある時期、私は独立系ファ
イナンシャルアドバイザーを務めていたことがあります。その立場から、初めて投資にチャレンジす
る方に少しだけのアドバイスをさせていただきます。当たり前のことですが、株式投資に必勝法はあ
りません。ただし、有用な経験則はあります。知っているのと、知らないのでは大きな違いがありま
す。従って、一通りの勉強は必要です。なぜならば、この世界では個人投資家もプロと同じ土俵で戦
っているからです。他の世界のように常にプロが勝つということでもありません◆次に、銘柄選択に
必要以上に時間をかける必要はないということです。もし、銘柄選びに時間をかければ良いリターン
が得られるというのであれば投資信託や年金の運用成績は素晴らしいものになるはずです。実態はど
うでしょうか。お分かりいただけると思います。寸暇を惜しんで銘柄選択に取り組むというのであれ
ば、それは趣味の領域ですからそれはそれで楽しみが増えたということで良しとしまょう◆さらに、
分散投資とは矛盾するのですが、投資する銘柄数は少なくて良いということです。例えば30銘柄以
上に投資するというのであれば、管理するのが容易ではありません。個人的には、5〜10銘柄が無
難ではないかと思います。10銘柄以内であれば、1日に5〜10分程度である程度のチェックは可
能ではないでしょうか。次号では私の経験もご紹介しながら、もう少し踏み込んでみたいと思います。
II.復興特別所得税は少し面倒です
東日本大震災からの復興の財源確保のため「復興特別所得税」「復興特別法人税」が課されることに
なりました。
これにともない各種手続きにおいて注意点が必要となっています。
【給与計算】
平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に支払う給与については所得税とともに復興特別所得税
(所得税額×2.1%)も併せて源泉徴収しなければなりません。
【源泉所得税の納付】
源泉所得税を納付する際には所得税と復興特別所得税の合計額を納付することとなります。
納付書については所得税と復興特別所得税の合計額を記載します。また、税理士や弁護士に支払う報酬
についても所得税に併せて復興特別所得税を源泉徴収することとなっていますので納付書記載の際には
注意が必要です。
【予定納税】
平成25年から平成49年までの各年分の予定納税基準額は、所得税及び復興特別所得税の合計額で計算
します。
予定納税基準額が15万円以上である方は、所得税及び復興特別所得税の予定納税をすることになります。
【確定申告】
平成25年から平成49年までの各年分の確定申告については、所得税と復興特別所得税を併せて申告しな
ければなりません。
【年末調整】
所得税の年末調整をする場合には、所得税及び復興特別所得税の年末調整を併せて行うことになります。
【法人税】
法人については平成24年4月1日から平成27年3月31日までの期間内に最初に開始する事業年度開始の
日から同日以後3年を経過する日までの期間内の日の属する事業年度については、法人の各事業年度の
所得の金額に対する法人税の額に10%の税率を乗じて計算した「復興特別法人税」が課せられます。
利子など一定の所得に課された「復興特別所得税」の額などがある場合には、「復興特別法人税」から
所定の金額を控除した後の金額を納付することとされています。また、「復興特別法人税」の額の計算
上控除しきれない「復興特別所得税」の額がある場合には、その還付を受けるための申告書を提出する
ことができます。
なお、「復興特別所得税」の額は「復興特別法人税」の額から控除することとされているので、法人税
の額から控除することはできません。
「復興特別法人税」の課税期間は上記の3年間ですが「復興特別所得税」の課税期間は平成25年から平
成49年の25年間であるため「復興特別法人税」の課税期間外であっても、控除をされるべき「復興特別
所得税」の額があるときは、復興特別法人税申告書を提出することにより、その復興特別所得税の額の
還付を受けることができます。
それにしても所得税額の2.1%という微妙な割合。復興特別所得税の計算をするのも結構面倒です。
政治的な配慮はあっても実務についてはあまり考慮していないのでしょうか。
III.死の谷とクラウド・ファンディング
政府の規制改革会議の創業に関するワーキンググループで金融庁は、新規・成長企業の問題点の一つと
して「死の谷」の問題を挙げました。
技術やアイディアを事業化する初期の段階では、リスクマネー供給が不十分なことも一因となって事業
を軌道に乗せられないケースが多いようです。そこでインターネットで小口の資金を幅広く募集するク
ラウド・ファンディングを利用した新制度を検討しているそうです。
日本では寄付など金銭的リターンを伴わない形態でのクラウド・ファンディングが中心となっています。
金融庁の構想は新規・成長産業と投資家をインターネットサイト上で結びつけ、多数の投資家から少額
ずつ資金を集める株式投資の形態です。
クラウド・ファンディングの事例としては、ニューヨーク在住の日本人監督によるドキュメンタリー映
画の日本公開の配給宣伝資金の募集があります。
当初の目標金額1000万円を超えて818人から1402万4203円を集めることに成功しました。
この映画は製作時にも、米国でクラウド・ファンディングにより資金調達を行ったそうです。
ベンチャー事業も多くのファンや支援者を集める力があれば「死の谷」を越えることができるかもしれ
ません。
規制改革による後押しが期待されます。
(Webデザイナー)
IV.育児休業制度とは??
イクメンということばもだいぶ世の中に浸透し、これから結婚出産をしようとする人たちを含め、男女
ともに育児に対する関心が高まっているようです。そんな中、その期間を3年まで延長しようという
プランも出ている育児休業ですが、実際どのような制度なのでしょうか。
育児休業制度では、労働者は申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間、育児休業をすることが
できると定めています。対象となるのは、育児休業に入る前の2年間のうち、11日以上働いた月が
12ヶ月以上ある人です。これはママだけでなくパパも(男女を問わず)取得することができ、パート・
派遣・契約社員などの期間雇用者でも、1年以上働いていて、子が1歳に達する日を超えて引き続き
雇用される見込みがあれば取得可能です。
産休中に会社から給料が出ない場合は、休業補償として健康保険から出産手当金が出ます。ただしフル
タイムで働いていたとしても国民健康保険の方にはこの制度はありません。
育児休業に入ってからは、育児休業給付金が雇用保険から支払われます。(このため雇用保険を支払っ
ていたことが支給の条件になります。)金額は今のところ、休業前の給与の50%×育休月数となって
います。
産前産後休業の場合は、健康保険料と厚生年金保険料の支払がありますが、育児休業中はその支払はな
くなります。もちろん被保険者のままです。ただしこれは、申請をした場合のみであり、遡っては適用
されないので、育児休業に入るまでに手続きを済ませておきましょう。
会社員であれば、その手続きを会社が行ってくれることが多いかもしれませんが、自分でも知っておけ
ばきっと役に立つのではないでしょうか。
(企業会計アドバイザー 米山 裕子)
V.文学に寄り添う音楽の役割
村上春樹氏の新作小説が刊行されてからしばらくたちます。その売れ行きの凄まじさの反面、書評家や評
論家と称される人たちの意見はかなり手厳しいものが多いようです。「これまで村上作品を読み続けてき
た人は読む必要はない」とか「駄作だ」といったものが目立ったように思います。
そんな中、私は同氏の別の作品と出会いました。そのきっかけとなったのは、某ラジオ番組でこの新作を
「駄作だ」と断じた書評家がその作品を絶賛したことからでした。その作品とは、「神の子どもたちはみ
な踊る」というタイトルで、阪神淡路大地震の直後に執筆され、六つの短編で構成されています。
読後の感覚は不思議なものでした。かつて私が高校生だったころから愛読した大江健三郎氏と安部公房氏
の作品を足して二で割ったような感じとでも表現したらよいのでしょうか。この三氏に共通するものが、
その作品の中に強く感じる音楽の存在だからなのかもしれません。
とにもかくにも、村上氏の新作では以前にも増して登場する音楽に注目が集まったわけですから、音楽が
文学作品においてどんな役割を果たすのかも楽しみの一つであることは間違いありません。
さて、私の出会った「神の子どもたちはみな踊る」という短編集に登場する音楽はどんなものだったので
しょうか。
次号もお付き合いください。
(覆面ライター 辛見 寿々丸)