I.新しい経済成長のモデル
東日本大震災から2年が経ちましたが、被災地の復興が遅々として進まない様子が、被災各自治体の
アンケートから具体的に伝わってきます。被災地と言っても、被害の状況によってそのニーズがそれ
ぞれ異なるわけですから、きめ細かい対応がさらに今後は求められることと思います◆その震災後、
「豊かさ」とは何なのかと「経済成長」に疑問を呈すような議論が多くなったことが個人的には少し
気がかりです。今回は、このことを少し考えてみたいと思います◆今世紀に入って、画期的な新薬の
登場がたびたびニュースで報じられます。ある調査によれば、その新薬の投薬を躊躇する患者が多い
ことが問題になっています。その大きな理由の一つが、公的保険の対象にならないことであったり、
たとえ対象となったとしてもその負担が重いという「経済的な問題」であることがわかっています。
さらには、経済的な理由から内服を中断するという深刻な事態も懸念されています◆公的医療保険財
政に余裕があれば、今後も開発される新薬の負担を賄う方法は見出せます。ただし、医療保険は税金
と事業主と被保険者が負担する保険料で運営されているわけですから、充分な税収と企業の利益が前
提となります。残念ながら、我が国の国民所得は減少し、医療費は増加しています。「公的医療保険
を厚くすべし」という意見がある一方で、現実的には難しいというのが現状です。おカネが病気治療
のネックになりかねないという事情を抱えてしまっているわけです◆つまるところ「私たちの健康を
支えるのは国家の経済力」ということになるのですが、このことを裏付ける統計があるそうです。こ
の統計では、一人当たりの国民総生産とその国の平均寿命をデータとして用います。この統計によれ
ば、この二つのデータの相関が明確にわかります。つまり、平均寿命の差は一人当たりの国民総生産
=国家の経済力によって決まるというわけです◆医療が進歩すればするほど、それにかかる支出も増
えます。とすれば、それを賄うための経済成長は絶対に必要です。おカネのために医療が受けられな
いような国に日本がなっても構わないというのでしょうか。私は、わが国には経済成長の余地はたく
さんあると思います。もちろん、伝統的な経済学的に見れば少子高齢化は潜在的な経済成長率のマイ
ナス要因なのかもしれません。しかし、新しい経済成長のモデルを示すことができればどうでしょう
か。伝統的な経済学は必ず打破できるはずです。